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Diary

水島 七恵

水島 七恵

http://mninm.com/

編集者。新潟生まれ。デザイン・アート・ファッション・映画・音楽などを思考領域としながら、企業広報紙や雑誌を中心に、企画と編集、執筆を行う。最近の仕事に、「TOKYO PAPER for Culture」(vol.01〜)の編集ディレクションと執筆、雑誌「リンネル」(毎月20日発売)でのシネマレビュー執筆などがある。自分の原点は、音楽。最近目覚めたことは、筋トレ。




北九州は小倉、そして日田

2017年04月20日 

3月の終わり。

画家の牧野伊三夫さんと一緒に、牧野さんの故郷でもある
北九州は小倉と大分県は日田を旅する縁に恵まれました。

牧野さんの視点もお人柄も、そして描かれる絵も、
全てがチャーミングでユーモアがあり、
それでいて鋭く、太く、かっこよく。
とにかく一言では言えない何層にも渡ったその魅力に
いつも取り憑かれている私は、牧野さんの目線で眺める
小倉と日田を旅できるとあらば行きたいと、決まった時点から本当に
ワクワクしました。

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「小倉へは船で」。
行き方のディレクションも入りました。

大阪・南港から北九州・新門司港までフェリーが出ているから
それに乗って北九州へ来ると良いですよ、と。

フェリーは名門大洋フェリーという名。
大阪から九州まで、新幹線であれば2時間半で着くところを、
フェリーに揺られる場合は、10時間以上の旅になります。
佐渡島に住んでいたことのある私にとって、
船は案外と身近な存在ではあったけれど、
瀬戸内海を航海するのは初めて。

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実際乗ってみると、これまた一瞬、まさかのタイタニック気分。
佐渡島を往復する船の規模とは格が違うし、
何より船という非日常の空間は、人を高揚される力を持っています。

その後、お風呂に入れば、女子高生たちと裸の付き合いをしたり、
明石大橋を通る瞬間を見たいと甲板に出れば、記念写真に夢中の大学生の集団と相見えたり、
そこでタイタニック気分から一気に修学旅行気分へと様変わりするわけですが、
それはそれで楽しいものでした。

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翌朝。
この風景を見るために、名門大洋フェリーに乗ったのかもしれない。
そんな瞬間を掴みとりながら、新門司港へ到着。
小倉駅にて牧野さんと合流しました。

月天という、最高の小倉ラーメンを食べた後は、
小倉北区京町に開館した「北九州文学サロン」へ。

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牧野さんがサロンのシンボルとして、
陶板画「かがやく太陽、燃える鐵、うたうわれら」をTOTOと共同制作されていたので
それも合わせて見学するために訪れました。
サロン内に展示されていた北九州ゆかりの作家のパネル一覧を見ながら、
こんなにたくさんの作家を生み出した土地なんだと思いつつも、
実際、自分自身小倉の街を踏みしめてみて、納得する部分もあり。
炭鉱の街、小倉は街を射す光がどこか切なくて、淡い感じがあって、
その孤独な振る舞いが、書くという行為に走らせたのかな、などと思ってしまう。
実態のない言葉で申し訳ないのですが、それがとにかく私の実感でした。

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その後、牧野さんの北九州の画室、足立山にもお邪魔して、古い作品をたくさん見せていただき、
敬愛する画家の深層部にたどり着いたような気分をたっぷり味わい、
陽も暮れた頃には、門司港にてそれはそれは人生で一番というお寿司を食べました。

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翌日。
小倉から大分県日田へ。
日田では牧野さんは冊子係として参加しているヤブクグリのみなさんと合流。

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「いま、森を見よ!」
の合言葉で、 森を愛する仲間が集い、
日田の林業を中心に何か愉快なことをやっていく会、ヤブクグリ。

私はそんなヤブクグリの周辺に身を置かせていただくことで、
念願だったきこり飯を食べたり、日田杉の現状を知ったり、
ヤブクグリミーティングに参加させてもらいました。

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そして日田といえば日田シネマテーク・リベルテさんです。
オーナーの原さんがキュレーションした映画作品の上映をはじめ、
牧野さんを含む様々な作家さんによる作品の展示や
カフェスペースもあるリベルテさんは、
映画館でありながら、映画だけではない空間を、
とても大切に積み重ねていました。

私はそこで2度目となる「この世界の片隅で」、
そして「五島のトラさん」を牧野さんやヤブクグリのみなさんと鑑賞。
旅先でそれも朝、映画を観ることは初めてでしたが、
これがまた旅を満たす後押しに。
鑑賞後では、見えている景色が少し変わって見えるから不思議です。

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もちろん、日田の美味しいものもたくさんいただき、
牧野さんが大切にしてきた風景を、一緒になぞるという楽しみを存分に味わい、
私はそのまま別府へ。牧野さんは飛騨高山へと向かいました。

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3泊4日。
非日常の時間を過ごしながら、
その土地の日常をつねに探していました。
ワクワクしたり、どきどきしたり、本当に色っぽい瞬間とは、
いつだって日常にあるように感じています。
それを敬愛する人と一緒に共有することは、
幸せと呼ぶんだなあと思った、旅でした。
ここでの旅が、自分の日常にどう作用するのか、
とても楽しみでもあります。

 

 

 

良いデザインとは何か。

2017年03月20日 

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創刊号から編集ディレクションと執筆を担当している
フリーペーパーTOKYO PAPER for Cultureの最新号(vol.16)が完成して、
現在、都内を中心に配布がスタートしています。
(*ウェブマガジンでも読むことができます)

 

巻頭対談に、宮前義之さん(ISSEY MIYAKE / デザイナー)と
緒方壽人さん(takram / デザインエンジニア)に「拡張していく身体感覚」をテーマに
話をお伺いしたのですが、この対談を通じて、個人的にもハッとさせられたことがありました。

 

エンジニアリング、それは直訳すると工学。
数学も関わる、それは私のとても苦手な分野として、どこか捉えていました。

 

例えばエンジニアリングを自分の身近な領域に置き換えると、
インターネットの世界が思い浮かびます。
まるで暗号のようなアルファベットを打つ=プログラミングすることで、
コンピュータに指示を与え、結果的に私たち人間の思う通りにウェブメディアが構築されていく。
その立役者がエンジニアと呼ばれる技術者だと私は思っていました。
つまり、見た目の意匠がデザインだとするならば、
それを支える構造がエンジニアリング、
となるわけですが、今回宮前さんと緒方さんの対談を聞きながら、
デザインとエンジニアリングは役割は違う。
だけど優れたデザイナーはエンジニアリングのマインドがあること、
またその逆もしかりということを気づかされました。

 

と同時に、何より私はデザインの、美しい構造にいつも惹かれていたんだなあと痛感したのです。

 

編集者という仕事柄、デザインはいつも身近な存在です。
例えば編集者として紙媒体を作るとき、
グラフィックデザイナーが誰よりも仕事のパートナーになります。
編集者が頭の中で設計した企画を、様々なクリエイターの力を借りながら編んでいった先に、
最終的にはデザインの力で「形」になるのです。
形、見た目の意匠は、デザインによって大きく変わります。
ときにデザインがその媒体の性格すら変えてしまうことがあります。
デザインの強さも怖さも美しさも日々感じているからこそ、
デザインには敬意を持って生活してきました。

 

良いデザインとは何か。
私がいつも美しいなと惹かれるデザインは、
見た目だけの意匠に寄りかかるのではなく、
美しい構造にあったんだ、
つまりそれを対談を通してハッとしたんです。
イメージとしては、構造は体幹のようなもの。
体幹がしっかりしていないと人間も不安定になるように、
デザインもまた、体幹がないと不安定になります。
見ていてなんだか気持ち悪い、
落ち着かないデザインはこういうことだったんだと
やっと言葉にできたような気がします。
デザインとはフィジカルなもの、それもまた改めて思い知らされました。

 

ちなみに文章を書くということもまた、
すごくフィジカルな行為だなあとつねづね思うのですが、
そのことはまた改めて綴れたらいいなあと。

本当に着たいボーダーシャツ

2017年02月20日 

ボーダーシャツという衣服。
その親しみやすさと定番感に甘えて、
今まで本気で探して手にしたことはなかったかもしれません。
G.F.G.S.に出合うまでは。

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このダイヤリーでも過去に何度か触れたことがありますが、
G.F.G.S.は新潟県加茂市発のファクトリーブランドです。
私自身、新潟県出身で加茂は母の故郷ということもあって、ALOYE×G.F.G.S.の記事執筆をきっかけにお正月やお盆に地元に帰る度に、G.F.G.S.のラボに遊びに行かせていただいては、
代表の小柳さんをはじめ、スタッフの皆様にはお世話になっていました。
そんななか、今回、改めてお仕事のご縁にも恵まれて、G.F.G.S.を伝えるための
ビジュアル冊子をディレクションさせていただきました。

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G.F.G.S.のアイデンティティとは何か。

ディレクションすることは問いを立てることでもあって、
この問いに対する答えを私は、
新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)を拠点に活動する
ダンスカンパニーNoismをモデルに起用した撮影を試みることにしました。

 

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2004年春に創設されたNoismは、創設から現在に至るまで、
ずっと国内唯一の公共劇場専属ダンスカンパニーとして、革新的な活動を行なっています。
既存の型を打ち破りながら、自分たちの型を作る振る舞いは、
完全受注生産で、1着からオーダー可能な型を取るG.F.G.S.のマインドに近しいものを感じました。

 

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自分たちの道を突き詰めていくという攻めの姿勢。
活動のフィールドは違っていても両者の根底に流れているものはきっと繋がっている。
そう信じながら、「街は踊る。」をテーマに、
撮影のためのチームを組みました。

そして撮影本番。

現場の雰囲気には本当にしびれました。
地下駐車場も舞台にしてしまうNoismという、
身体性の強度にただ圧倒されながら、
いわゆるファッションカタログという言葉では片付けられない何か違う手触りのしたもの、
それは「The first G.F.G.S. archive in 2017」へと導かれていきました。

 

しなやかな身体が纏うボーダーシャツは、G.F.G.S.の新作になります。

 

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環境は人を左右するものです。
東京の快晴も好きですが、
新潟の鉛色の空でしか生まれない文化や表現もきっとあると思うのです。
私自身、とても良い経験をさせていただきました。
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Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平