1. TOP>
  2. Diary>
  3. 常滑でガウディ?

Diary

常滑でガウディ?

2017年04月10日 

17522985_1313875008694723_2160664292206701109_n

常滑のまちを歩いているといたるところにやきものがあって驚く。それらはすべて生活の痕跡を感じさせ、ここがどのような場所で、どのような人が暮らし、どんな歴史をへてきたのか。雄弁に物語っているように思えた。そしてそれはさらに、ここで暮らす人々の今の暮らしをも想像させるものであった。

衛生陶器や住宅設備などで知られるINAXのミュージアム、「INAXライブミューアム」は、そんな常滑にある。常滑とはJR名古屋駅から特急電車で30分ほどの場所にあり、すこし行けば、名古屋国際空港がある、海に近いまちである。
先のやきもので分かる通り、土とやきものの魅力を伝える文化施設である「INAXライブミュージアム」には、古今東西のやきものが展示され、土に触れ、楽しむための企画がたびたび行われている、まちと人に開かれたミュージアムである。訪れた日も、光るどろだんご制作のワークショップが開催されていて、たくさんの子どもたちで館内はにぎわっていた。

今回、INAXライブミュージアムを訪れたのは、館内で昨年11月にはじまった『つくるガウディ』展をみるため。これはINAXライブミュージアム開館10周年を記念に行われているもので、このミュージアムのコンセプトであり、スペインの建築家アントニオ・ガウディのコンセプトのひとつでもある、土とタイルをモチーフとした表現の可能性を追求するものとして、建築家と職人のコラボにより、ガウディ建築を再現するというもの。

17546662_1313874595361431_6783771933976844601_o

実際に訪れた日には、天井高のある館内いっぱいにガウディが設計した未完の「コロニア・グエル教会」を再現した、アーチ状の建築をみることができた。

17800016_1313874625361428_7290934491486441489_n

本展において、本作が制作される「土・どろんこ館」など、INAXライブミュージアムのいくつかの建物も設計した建築家・日置拓人氏が手がけるのは、ガウディの作品の中でも未完の建築として知られる「コロニア・グエル教会」から着想を得たもの。コロニア・グエルは未完でありながら、ガウディが10年もの歳月をかけて逆さ吊り構造実験など、その後の「サグラダ・ファミリア」につながる構造実験をしてまで向きあった建築。今回その制作にタッグを組むのが、土の専門家である左官職人である久住有生氏、これも土からタイルをつくるタイル職人である白石普氏の二人。

17620130_1313874775361413_3608456019181188168_o

会場は建設現場さながらに、建設途中の建築、そしてそのまわりには足場が組まれている。館内に入る人はまさに建設現場に入るときのように、ヘルメットを着用する。「コロニア・グエル教会」は地下部分以外は未完で、今回のエキシビションではその地上部分の建築の一部を3人の作家たちが再現した。
土とやきものというINAXライブミュージアムのコンセプトは、タイル、土、レンガといったガウディ建築のモチーフとも重なる。

17800002_1313874365361454_4246955651050275920_n

木材で組まれた足場は、現在ではみることほとんどないが、これは19世紀から20世紀初頭という、ガウディの時代の建築現場を想起させる。
一歩足を踏み入れれば、左官やタイル貼りといった職人の手仕事を間近にみることができる。当日は二人の職人が手に仕事道具をもって、施工の真っ最中。

17798957_1313874325361458_2911491507694754233_n

左官を手がける久住氏は、祖父の代から続く左官職人の家に生まれ、海外でも修行をした経験をもつ左官界のカリスマとして知られている方。商業施設やホテル、歴史建造物の修復なども手がけ、さまざまな技法を取り入れながら、圧倒的な知識と経験なくしては成り立たない左官の魅力を世に伝えている。
左官について裏方の仕事といい、ただただ真っ平らな壁をつくるのが実は一番難しいという久住さんの仕事はこの作品においても、美しいテクスチャーをもった仕上げを実現している。

17634820_1313874778694746_3828714008571858524_n

一方、タイルを手がける白石氏は、20歳のときにイタリア・ギリシャでみたローマ遺跡やビザンチン建築に刺激を受け、タイル職人になった。イスラム建築などにみられる幾何学モザイクに魅せられ、モロッコで実際にモスク建築に携わった経歴をもつ。数々のタイルのデザインと自ら施工も行う。

17796626_1313874628694761_5715972644359613497_n

この建築に使われるタイルも本作のために特別にデザインし、つくられたもの。この作品ではなるべくシンプルに、同じ形のタイルを使い、職人自ら貼りながら考えることで、白石氏にしか実現できない表現を生み出している。

17798970_1313874348694789_4982291241994327456_n

タイルは土とのコラボレーションだが、あえて土らしい色ではなく、グリーンからブルーのグラデーションの自然界のなかにあるような鮮やかな色に仕上げられた。数種類のタイル制作は、石膏で型をとり、そこにひとつずつ粘土を嵌めて象り焼いて釉薬を施し仕上げる。

17800237_1313874768694747_1559696109327631268_n

現代でありながら、そのドームの内側には時代を越える静謐な空間が広がっている。日本なのかスペインなのか分からない本作の制作の現場に職人さんがいる風景は、なんともいえないものであった。これは公開制作を見学できる本展ならではの魅力にほかならない。
ガウディが残したスケッチなどをもとに、現代の建築家が想像しながらつくったという建築も、1/4というスケールでありながら、大きな広がりを感じさせる。左官の流麗な仕上げ、あまり日本の建築ではみられない天井のタイル張りなど、見所がたくさん。このプロジェクトが教えてくれるのは、ものをつくるたのしさ。こんな豊かな表情をもった建築を実現するのは、このものをつくるたのしさが原動力になっているのだ。

『つくるガウディ』展の会期は2017年3月31日までだったが、『完成!常滑ガウディ』展が4月15日から5月30日まで、ここINAXミュージアムで行われる。これは公開で制作された”常滑ガウディ”の完成お披露目であり、美しい照明演出とのコラボによる作品展示である。

会期スタート前日となる4月14日には、建築家の伊東豊雄氏のトークがオープニングイベントとして開催されるというから、こちらにも注目したい。
建築家、そして普段はむしろライバル関係にある左官、そしてタイル職人の緊張感のあるコラボレーション。そこからあらたに生まれたガウディの建築。目撃できるのは今だけだ。

17796629_1313874872028070_8949194718666170602_n

INAXライブミュージアムの敷地には、やきものにまつわる建造物の宝庫。昔からのこの場所にあった煙突、窯、建物などが保存され、このまちがかつて、やきものでいかに賑わっていたか往時をしのばせる。

17760040_1313874925361398_3332030937140503725_n

ミュージアムに訪れたら、ぜひ常滑散策を楽しんでいただきたい。1850年ころに建造された、常滑市指定有形文化財になっている廻船問屋「瀧田家」前の坂道にもやきものがずらり。まちの至るところにあるやきものに、このまちの歴史を垣間みることができる。

17795849_1313874952028062_8732899565142711648_n

細い路地には猫がつきもの。やきもののお店では招き猫がお客さんを迎えてくれる。

そしてここのまちのシンボル「とこにゃん」。常滑のメインストリートを崖の上から見下ろしている。

17796823_1313874502028107_3413788626341043631_n

« 3月 2017年4月 5月 »
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平