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Diary

ジョセフ・アルバース、という視点。

2016年12月20日 

生きていてワクワクする瞬間とはどんな時ですか?

あるとき、ふいに人に質問されて、一瞬戸惑いながらも、

「見えていなかったものが見えるようになったとき。
こういう見かたもあったんだ、と発見したとき、気づいたとき」
と答えている自分がそこにいました。

 私が職業にしている編集者という仕事は、言い換えると、無限にある視点から、
「こういうものの見かたもありますよ」と、一つの視点を提案するような仕事でもあります。
ものの見かた。それは世界の見かたでもあるような気がしています。

 

例えば10代の頃に手にした本。開いてみたけれど、言葉が入ってこなくて全く面白くなかった。
なのに10年後に再び手にしてみたら、すごく面白く読み進められた、ということがよくあります。
なぜ面白くなったのか。それはきっと10年間のあいだにいろんな人に出会い、いろんな経験をして、
そこで世界の見かたを増やしてきたからなんだろうな、と思うのです。
そして見かたを増やすことは同時に選択肢が増えることでもあり、
選択肢が増えることは、多様性を受け入れることにもつながるような気がしています。
例え自分とは決定的に違っても、こういう見かたをする人もいるんだなという、見かたができれば、
もう少し世の中から争いごとが減るような、そんな気さえもするのです。

 

ジョセフ・アルバース。

 

1920年代ドイツのバウハウスのメンバーであり、アーティストでもあるアルバースの作品に、
私はワクワクしています。
 お恥ずかしながら20世紀を代表するアーティストでもあるアルバースを
ちゃんと知ったのは今年の事です。
きっかけは、1月にミサワバウハウスコレクションで行われていた企画展
「バウハウス前、バウハウス以後」での事。

 

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そこで展示されていたアルバースの「正方形へのオマージュ」シリーズ。
様々な色調や大きさの正方形を重ねて描いた連作でした。
シンプルな構成の抽象画とも言えるその作品を見ながら、
私はアルバースがどのような背景を持って、
ここにたどり着いたのか気になりました。
と、その作品のそばに置いてあった彼の著作をすぐに手にしました。
タイトルは、『ジョセフ・アルバースの視覚世界 Despite Straight Line 直線のみで』。
中身は直線のみによる作品とアルバースの詩文を中心に紹介されていましたが、
まさに作品は何の情緒のかけらもない直線の組合せからできています。
けれどその線は、見れば見るほど何か、物語が立ち上がってくるのです。

 

作品を形成する要素はすべて等しい重要性を持っている。
アルバースの作品群は、見る人の関心の在り場所の度合いによる、
上下の関係というものが存在せず、知覚の領域についての手がかりだけがある。(※)

 

※『ジョセフ・アルバースの視覚世界 Despite Straight Line 直線のみで』から、
フランソワ・ブシェの解説より抜粋

 

本の中で綴られていた美術史家、フランソワ・ブシェの解説を読んで腑に落ちました。
そして、私の中であたらしいものの見かたがまた一つ増えた気がしました。

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 先日、アルバースと同じようにいつも私にものの新しい見かたを気づかせてくれる
グラフィックデザイナーの佐藤卓さんがディレクションする企画展、

「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」を21_21 DESIGN SIGHT
で観ていたら、1Fの書籍や雑貨の販売コーナーに、ジョセフ・アルバースの著書が
置かれていました。タイトルは「配色の設計 色と知覚と相互作用」。

「色のインタラクション」とは「色と色のあいだで起きていること」であり、
それは「私たちの心のなか」で起きていることなのだ。
インタラクションを学ぶことは「私たち自身を学ぶこと」にほかならない。(※)

 

※「配色の設計 色と知覚と相互作用」日本語版に寄せて/ 監訳者序文より

 

序文だけで、ぐっと引き込まれるわけですが、佐藤さんもアルバースも
共通しているのは、実践から生まれた理論がしっかりあって、
それもいろんな人が自分ごとにできるような柔らかな言葉で語られているという点です。
言葉がすべて肉体的なのです。

しばらくはこの本を読んでまた新しいワクワクを獲得したいと思います。

 

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加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
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