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Diary

自分のなかの野生

2016年11月20日 

先日、山形を訪れました。

現在、発売中の雑誌GINZA( No. 234)の特集記事の取材のために。
写真家・志鎌康平さんの案内による山形の野生、営みを体感したいために。
前者は仕事。では後者はというと、
メインビジュアルの強さだったのか。
そのビジュアルを撮影した山形在住の志鎌さんとの出会いが大きかったのか。
きっと両方が影響していることは間違いない。
世界は存在しているのではなく、見るから存在している。
見る人の視点によって世界が変わるなら、
志鎌さんの目線で、私も山形を見れるのならきっと面白い!
まさに縁を感じながら、志鎌さんを紹介してくれた
友人で山フーズを主宰する小桧山聡子さんと山形を訪れました。

 

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山形に訪れてまず新鮮だったのが、四方八方、山に包まれるという感覚でした。
18歳まで育った新潟での暮らしで山のある風景には
慣れているつもりだったけれど、
360度、どこを見渡しても山のある風景は初めて。
それに新潟の山々とは違い、山形の山々の稜線はどこまでも穏やかで。
 そしてこの山々こそが、山形の野生であり人々の営みと文化を作り出していました。

 

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出羽三山をご存知だろうか。
羽黒山、月山、湯殿山、3つの山を総じた出羽三山は、
古くから山岳信仰の場として知られ、今も多くの人たちが参拝に訪れる、
いわば山形のパワースポットです。

今から約1400年前、第32代宗峻天皇の王子が羽黒山を開いたのが
出羽三山の始まり。羽黒山が現在、月山が過去、そして湯殿山が未来、
と、時を表し、三山の参拝は江戸時代に庶民の間では『生まれかわりの旅』
として広がり、地域の人々に支えられながら、その旅は今も守られてきました。

その羽黒山に私たちは今回登ってみることにしました。

山頂に至るまでの距離は約2km。
参道には樹齢300〜600年に及ぶ老杉が生い茂り、
山頂まで続く石段は2446段。
道中、東北では最古の五重の塔がそびえ立ちます。
腑に落ちる。とはこういう時使う言葉なのかもしれません。
羽黒山の入り口に、一歩足を踏み入れた瞬間に、
自分の中の一番奥深い部分、内の世界と外の世界がピタリと
つながるような感覚がしました。
それはきっと日本古来の、山の自然と信仰の姿を見たからなのかもしれない。
私の血が覚えているその姿は、私の中に備わった野生でもありました。
理屈では言い表せないその感覚を頼りにしながら、石段をひたすら登った先に、
山頂の赤い鳥居がありました。

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くぐった先に、霧で覆われた一面の中に、
羽黒山、月山、湯殿山の三神合祭殿がうっすらと見える。
まずはそこで参拝をした後、辺り一面をじっと見渡すと、
山伏が滞在する長床なども含め、

自然の地形に応じて建物が配される山岳寺院特有の景観が広がっていました。

 

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この場所でこれまでどれだけの人が祈ったのだろう。様々な想いと背景を抱えながら。
人の痛みも喜びも歴史も全て受け取めながら、羽黒山は粛々とその姿をつないでいました。

 

 

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宿泊した農家民宿、知憩軒の女将からの一言は、今も心に携えている。
「語るなかれ、聞くなかれ」。
出羽三山のなかでも特別に神秘的な山、湯殿山のことをこう言い表すのだと言います。
現世利益の御神徳にあずかる羽黒山。
山頂で大神を参拝して死後の浄化を受ける標高1984mの月山。
そして大神より新しい生命を賜って生まれ変わる湯殿山。
「現在」は今回の旅で確かめました。
次は過去、そして最後は未来、湯殿山を目指したい。
滝や巨大な岩など、自然の森羅万象に人間の意志を超えた生命の神秘を感じとって
生きてきた私たちの祖先。その血は今もなお私の身体を巡っています。
合理性が求められる現代社会。
傍らではきっと大切なものが溢れおちてしまっている。
その危機感のようなものが、本能的に私を山形に運んでくれた。
ふと、そんな気がしました。

 

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山々に包まれながら、自分の中の野生が、大きく揺さぶられた。

 

 

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Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平