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Diary

問いを立てる人

2016年07月20日 

雑誌リンネル(発行:(株)宝島社)で
かれこれ5年以上執筆させていただいてきた映画レビュー。
まだ公開していない新作映画を一足先に鑑賞して、
そのなかから4作品を選び、誌面にてレビューを書いていた。

その「映画レビュー」ページが、今日発売(7月20日)の号から少しだけリニューアル。
私自身が「Recommender」として、より個人的な視点を持って作品をなぞりながら、
4作品、紹介することになった。

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リニューアル第1号としてフォーカスした作品は、8月6日から新宿シネマカリテほか全国公開予定の、グザヴィエ・ドランが出演している『神のゆらぎ』。
今をときめくグザヴィエですが、主演ではなくあくまで出演、という点もまた、
脚本の完成度の高さも相まって、納得の一言だった。
グザヴィエはあくまで作品の一つのピースにすぎないのだから。

このように長く映画の記事を書かせていただいているので、
「映画に詳しいんですね」と時々聞かれるけれど、
そんなとき、「はい」と私は素直には言い切れずにいる。
もちろん、仕事としてお引き受けしているので、書いたレビューには責任を持っている。
けれど、映画に詳しいという前提は自分にはないし、
ましては肩書きとして「映画ライター」とは言えない。
今日は映画のことを、明日は建築のこと、明後日はファッションのこと….、
日々、違うことに頭をシフトしながら、編集したり、執筆したりしている私は、
専門分野がないという自覚がある。
流れのまま、好奇心のままに歩んできた結果が、今の自分の現在地である。

 

世界はつくづく人それぞれの主観で成り立っていて、
だからこそ、私という素材を見てくださった他者が、
「映画が強いんだな」「デザインやアートのことが詳しいんだ」など、
それぞれの見かたと判断で私に仕事を依頼してくださる。
それがきっと正解で、私のなかには正解がない。それでいいのだと思う。

 

一方で、馴染みある世界ではなく、知らなかった世界に飛び込んでいくということは、
仕事上、お相手にご迷惑をおかけしたり、ミスに繋がっていくというリスクも当然ある。
実際、知識や勉強が足りず、その世界では当たり前としている「前提」がわからず、
先方に不安感を与えてしまったのではないだろうか….と思う場面は、これまで何度かある。

編集者として書き手として、それは本当に心苦しいことで、それは今も日々、そのリスクを抱えながら仕事をしている。

それでもそのリスクを越えて、いろんな分野の境界のあいだを行き来しながら
仕事をしているのはなぜか?
ふと考えた時にはっとしたのは、「問いを立てる」ということだった。
先の通り、私は映画だったり、建築だったりのその道のプロや専門家ではない。
だから答えは知らないし、持っていない。そもそも自分の実感なくして答えにはたどり着けない。
たとえ事前に資料を読んだり、時に人に答えを教えてもらっても、
自分の身体を通していないそれは、答えとは言い切れない。
そんな私にできること、その唯一は「問いを立てる」ということだった。

 

「正しい選択とはどういうことか?」「見えない世界とは何か?」

 

対象に対して適切な問いを立てる。
その問いこそがその分野や専門家と読み手をつなぐ架け橋になるのだ。
つまり私の仕事は、「問いを立てる人」、だ。
良い問いを立てることさえできれば、あとはとてもスムーズに走ることができる。
映画でも建築でも、デザインでもアートでも…..どんな分野もフラットに、同じテーブルに置いて
編集したり書いたりすることができるのだ。

 

「いい質問ですね」

 

良い答えを持つよりも、良い質問、良い問いができる人になりたい。
なぜなら答えは人それぞれ違うものだから。
問いこそが、ばらばらの人の心をつなぐ、味方になるような気がしている。
なれたらいいという願いも込めて。

 

 

ちなみに、そんな私が近頃もっとも楽しみにしている新作映画は、
西川美和監督の最新作『永い言い訳』(10月14日全国公開)なのでした。
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加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
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