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手描き看板の味わい

2015年08月20日 

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街中を歩いていて看板を目にしない日はない。蕎麦屋、とうふ屋、ラーメン屋、銭湯、駄菓子屋、喫茶店、パン屋、コンビニ、文房具屋、自転車屋、不動産屋、コインランドリー、ファミリーレストラン。
その多くは屋号を知らせ、そこで扱う商品やサービスを宣伝するための広告であり、情報を伝えるためのなんらかのメッセージである。

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看板の歴史は日本では飛鳥や奈良、藤原京、平城京の時代にさかのぼるといわれ、市などでは店で扱う商材を図案などをもちい、目印として店先に掲出するのが義務づけされたのが最初だという。
その後平安京の時代に1枚目のあめ屋のようにはた、のぼり、のれんが使用されるようになり、鎌倉時代になって木の立て看板が登場する。当時は文字が読めないことも多く絵で示すことが主流で、その後、現在に多くみられるような文字がじょじょに広まっていった。木や竹に木彫りの絵や文字をほどこした表札などが登場、安土桃山時代末期になりそれらを称して”看板(ミせるためのイタ)”と呼ぶようになったという。

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看板の多くは建物の外装と一体になっているため、閉店後でも人はその前を通れば看板に書かれた文字を目にすることになる。24時間情報はつねに伝播していく。たとえ人が寝静まった深夜であってもその役割を効果的に発揮することが可能だ。

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あまたある看板の中で、個人的に一番その効果を直接的に発揮する力をもっているのが、手描き文字が書かれた看板だと思う。デザインを凝らした現代の看板や広告にくらべれば、いかにも素朴なものだが、上の「うなぎ」の文字のように文字を図案化する工夫が見られるなど、見ていて飽きないし、とにかく印象深い。

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今では規格化された文字、既成のフォントを使った看板が中心だが、時折、街中で見かける手描き文字で書かれた看板を見ると、必要がなくても、ついついその文字を目で追ってしまう。
書店や雑貨屋でときどき見かける手書きのPOPにも、その文字が印象的に描かれていたら、つい最後まで読んでしまうことがある。その宣伝としての割合を果たす力は、パソコンの文字で出力されたPOPよりも効果的だと思う。

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看板職人が描いたであろう、手描き文字の看板の地の色は白いであることがほとんど。白地にセリフ(線の端に撥ねや”ひげ”など装飾のある文字)の黒や赤の文字は、デジタル全盛のいま、一見して不器用な佇まいだが、文字に個性があり、力強い。現代の感覚では通り一遍の意味では決して美しいものではないかもしれないが、ある種の郷愁を誘う魅力がある。

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大阪・十三駅前の荷物預かり所の看板。駅にコインロッカーなどがない時代には、不動産屋を兼ねたこれら荷物や自転車を一時預かる「預り所」は各地にあったというが、実際に見たのは初めて。ほんの数週間前のことだ。

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これも1枚目のあめの俵屋と同じく、先日の出張先である石川県金沢市で見かけたもの。手描き文字の看板をもった建物は和風建築であることが多く、しかも、現在では商店としての役割を終えたものがほとんど。
傘屋、はき物屋、おもちゃ屋、家具店、金物屋。コンビニやショッピングモールのない時代、看板にかすれた文字で描かれた屋号のみが、かつてこの建物とそこで暮らす人が街とどのような接点をもち、暮らしのなかでどのような役割をもっていたのかをいまに教えてくれている。

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看板や貼り紙は、屋主からのメッセージであると同時に、”四万六千日(夏の日に設定された観音菩薩の功徳日)”のように季節を知らせる役目も担っている。

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〆は建物自体が看板のような造りをした「看板建築」の写真を。
道路に面した表側のみにタイルや銅板などで意匠を凝らしたこれらの建築は、関東大震災後に東京の下町を中心に数多く建設された洋風の外観をもった建物。そのほとんどが店舗併用住宅で、屋根裏部屋を持った3階建て、仕事場と住まいが近い、という昔ながら用途をもったものだった。
都心に立地することから80年代のバブル期にその多くは取り壊され更地になり、、新しい建物が建ち街並も一変した。今でも東京神田や月島、人形町あたりを訪れればみることができるが、写真の看板建築は神田須田町のもの。隣はコインパーキングになっているが、ほんの1年ほど前までは同じような看板建築が建っていた場所。

昔ながらの看板にはたんなるノスタルジーではなく、すっと情報が目に飛び込んでくる人の目を惹く強いメッセージ性がある。誰かに何かを伝えるという意味においてそれらをよくみることは、現代でも多く参考になると思うのだが。

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Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平