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Diary

眠ったような町

2015年06月20日 

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瀬戸内海沿岸のとある町。JRの駅からほど近い場所に眠ったように取り残されたエリアがある。

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建物はあるのにそこに暮らしている人の気配がない。車のエンジンがかかっているのに、乗っている人の気配がない。時々通りですれ違う人もどこか人見知りだ。

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近くには小さな鳥居をもった神社があった。鳥居の両脇には見事な狛犬が出迎える。

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鳥居をくぐると参道の両脇には商店の名残が。お店の看板はあるが、今はもう引戸も閉ざされ営業をしている痕跡もない。
かつてここは海上交通の要所として栄えた町。JRの線路をはさみ、見事な石垣をもったお城が今も鎮座する。

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参道には所々建物が廃棄された跡なのか、コケが繁茂する空地も見受けられる。路地や商店からは今にも人が現れてきそうな気配がある。

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参道の中程でこのまま先に進んでいいものか、帰り道を確認してみたくなる。この先が行き止まりであるかのようにとても不安になる。

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参道を抜けるとそれほどの距離は歩いていないはずなのに、今来た道が遠くにみえ、そして先ほどくぐったばかりの鳥居も遥か遠くに小さくみえるだけだ。
参道には、今はところどころ破れてはいるが、屋根がかけられていた痕跡が。
かつてここも多くの参拝者でにぎわったのだろう。

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神社の境内は意外と広い。もちろん人っ子一人いないのだが、白ネコが一匹出迎えてくれた。カメラのレンズをむけると少し後ずさりをしたが、危害を加えるものではないことが分かったのか、ちょうどよい距離感をたもって立ち止まってくれた。挨拶がわりにシャッターをきらせてもらう。

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境内を横切る動く影が目の端に見えたと思い振りかえると、毛もふさふさな洋ネコさんがこちらを興味深げにみつめている。野良だろうか?毛並みもよく、丁寧に整えられているので、まだ若いネコだということが想像できる。
ここは人よりもネコの多い町なのだろうか。ネコが居心地が良いところは、きっと人の気持ちもよいはずだ。

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神社の外にでてみると、古い民家の向こう側に真新しいマンションもみえることに気がついた。
眠ったような町だが、人の生活の気配もする。すこし安心した。

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町角の床屋さんは今はもう営業はしていないが、三軒長屋の前には真新しい自転車が置かれている。家の中からは生活の声が聞こえてきたような気がした。

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そしてぼくはなんとなく、これはどこかでみた風景だなと思ってきた。

ぼくの好きな本に漫画家のつげ義春のものがあるが、どこかこの瀬戸内の町も70年代につげ義春が描いた世界観と共通するものがある。そう思った。
古い鳥居、瓦屋根、すすけた板塀、海へと続く先のみえない曲がりくねった道、錆びたトタンの看板。人影のような人の姿。

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ぼくが旅をしていつも探しているのが、一度も見たことがないはずなのに、いつか見たように感じられる風景だ。この小さな町にもそんな見たことのない大切な風景が、眠っているように、だがはっきりと息づいていた。

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Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平