1. TOP>
  2. Diary>
  3. ジャスパー・モリソンの日用品のデザイン思想から得るもの。

Diary

ジャスパー・モリソンの日用品のデザイン思想から得るもの。

2015年04月05日 

DSC_0742Ando Galleryのためにデザインした”Ando’s Glass”

使う者に使い方を委ねる、もしくは余白を残すことはともすれば物の完成度を失墜させ、時に無責任なもの作りの論理を巡りかねない危険をはらんでいる。そしてそれが作り手のエゴに結びつきかねないのも事実としてある。だからこそ高いクオリティが求められるのがもの作りの原点である。
それでも完全なものが味気のないものに見られることある。完璧なものにも時の経過とともに備わってくる”味わい”もあり、ものにはつねに「人」が介在しているからこそ面白いのだと思う。

DSC_0745ALESSIのスプーン(使い込んでいるのでキズだらけ)。

ジャスパー・モリソンのデザインも、ある種、使い方は使い手にゆだねる部分がある。それは余白といってもいいものかもしれないが、無垢なデザインの中に、つくり手の思想がこめられたゆえの、作為のなさがそのものの形にあらわれている。

L1170949

ジャスパー・モリソンの「ザ・クレート」を日常使いするようになってから、ものへの向き合いかたが少し変化してきたような気がする。それはこの何気ないワイン箱のようなシルエットが部屋にあるだけで、自分のデザインの見方や、空間やレイアウトの捉えかた、そしてこれを選んだ自分に対して重要な何かを試されているような気がするからだ。

L1170921

発表当時、ミラノサローネで配られたというザ・クレートの小冊子を見ると、クレートはスツールになったりベッドサイドテーブル、時に本棚にはめ込まれたお気に入りを納めるためのボックスになったりする。それはいまどきの、流行の生活様式に従ったように見える。
しかしジャスパー・モリソンが意図したものはそこからはうかがい知ることはできない。ザ・クレートはそれをディストリビュートするイギリスの若いメーカー「エスタブリッシュド&サンズ」との間に交わされた約束ごとが何であるのかを教えてはくれない。しかしエスタブリッシュド&サンズはブリティッシュメイドを標榜する極めて高いモチベーションと志をもったメーカーである。そこにはイギリス伝統のアーツ&クラフツ運動にみられる職人技の復権と擁護、そしてプライドが見え隠れする。

L1170922

ではザ・クレートとはなんなのか?字義通りにみればそれは木枠のことであり、ワインを入れたり果物を梱包するための輸送用の木箱を意味する。さあ、使い方は自由だ。あとはあなた方が考えなさい。いかようにも解釈は可能だ。ジャスパーは「エスタブリッシュド&サンズ」の為のベッドサイドテーブルを考案中、自宅で実際に使用している古いワイン箱以外の素晴らしいプロダクトの形を思い至らなかったという。これこそが今考えうる全てである。–それは使い勝手が良い。ワイン箱を前にしてはよりよいプロダクトの為の考察はほとんど無意味に近い。安く手に入るワイン箱をなぜ良質な木材を使って高い価格でリプロダクトする必要があるのか?すでにそのレベルで交わされた議論は無意味に近い。
それは絶賛され、恥知らずとこき下ろされる。マルセル・デュシャンのレディメイド作品になぞらえ、最高の賞賛を受けたりする。

L1170940

Vitraから発表されている圧搾コルクを使用したスモールテーブル「コルクファミリー」もジャスパー・モリソンのデザインだ。コルクの塊から削りだしてつくられる、チェスの駒のようなデザインだが、思いのほか重量があり、テーブルとしてものを置いたり、スツールとして座る機能のための安定感も申し分ない。素材そのものから浮き出たような形と色は作為のないデザイン思想そのものだろう。

L1170922

おまけ:6〜7年ほど前、池袋の無印良品で行なわれたエキシビションで買ったジャスパー・モリソンのカトラリーのシルエットがプリントされたエコバッグ。ジャスパー・モリソンは日本の無印良品や、マルニ木工などのプロダクトのデザイナーとしても知られている。大の親日家でもあるそうだ。シルエットだけで存在感を示すことができるのも優れたデザインのみが持ち得る力だろう。

« 3月 2015年4月 5月 »
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平