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Diary

『たまもの』と『たまきはる』。

2015年04月25日 

ある日、自宅の書棚を整理していたら、1冊の本が目に留まった。

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『たまもの』神蔵美子

いつ、どこで購入したのかまったく記憶にないその一冊の本は、ときどき私の気を惹くことがあって、
そういうときはその感情に従い、思いのままページをめくっては、また書棚に戻すのだった。

この本は、写真家の神蔵美子さんが自身と末井昭さん、
坪井祐三さんとの三角関係を撮影した極めて私的な写真集だ。
正直最初に見て読んだときは、神蔵美子さんの強大な自我に、私自身翻弄されてしまい、
すごく心を消耗してしまった。

人が強制的に指示した道ではなく、自分で選んだ道。その道に悩み苦しみ、
切迫しているひとりの女性の生き様を読みながら、私は最初、怖い女性だなとすら思った。

今回、その本のページをめくったのはどのくらいぶりだろう?おそらく3、4年ぶりだろうか。
読みながら、自分の変化にちょっと驚いた。
相変わらず、神蔵さんの自我は私を圧倒するのだけれど、
でも、少しだけ見かたが変わった気がしたのだ。

人の心はいつだって矛盾を抱えている。
正しい方向、社会的な常識、みんなわかっていても、そこに向かえないときがある。
その矛盾は非効率なものでもあり、痛みであり、悪になることさえあると思う。

その、どうしようもないもの、正しいものからこぼれおちるもの、行き場のないものこそが、
きっと数々の芸術を生み出しているのだと思う。芸術とは切実なものだから。
神蔵さんの抱える矛盾が、生きる切実さに変わっていた。

『たまもの』を読んで、3日後。

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ふらっと立ち寄った本屋さんで『たまきはる』を見つけた。
『たまもの』から12年の歳月が経った今年、発売していた『たまきはる』。
これもまた何かの縁だと想い購入した。

冒頭は、神蔵さんとアートディレクター野田凪さんとの交流、そのエピソードが書かれていた。
痛いくらいに、凪さんの命の躍動が伝わってくる。

少女のような華奢な身体を持つ凪さん。そしてその身体には決しておさまりきらない彼女の情熱。
凪さんは、仕事で何度かお世話になったことがある。
その情熱に巻き込まれる日々を送ったことを、『たまきはる』を通して蘇ってきた。
思い返してみると、凪さんもまた、いろんな矛盾を抱えながらその痛みとともに生きてきたように感じる。

『たまもの』と『たまきはる』。

芸術とはほんの少しだけ、人が抱える孤独を和らげてくれるもの。
まだうまく言語化できないけれど、2冊を通してそんなことを思った。

春の京都大阪大周遊

2015年04月20日 

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桜のおわりの季節の京都、大阪に取材に出かけてきた。東京から新幹線のぞみ号で京都に着いたときには、東京での雨が嘘のように空は晴れ渡っていた。

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まずは、山科の将軍塚青龍殿の舞台で始まった、デザイナー吉岡徳仁氏による「ガラスの茶室-光庵」のお披露目に行ってきた。

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清水の舞台の約5倍の広さをもつという舞台からは、眼下に京都の町並みを見下ろすことができる。
貴重な体験だった。ちなみに最寄りの蹴上駅からぼくはここまで徒歩でいったが、足が棒になった。次回はタクシーを利用したい。

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京都駅近くの九条にある崇仁地区では現代アート展「still moving展」が開催中。京都駅から徒歩5分ほどの場所に位置していながら、フェンスに囲まれた更地が目立つこの地域は、華やかな京都の違った側面を表している。

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フェンスの平屋住宅の向こうには、1964年に竣工した京都タワーものぞむことができる。本アート展ではこの地区に点在するフェンスの中と、この地域の子どもたちが通っていた廃校を舞台に展開されている。週末のみの開催だが、この時期に京都を訪れる予定のある方は、ぜひ見てみていただきたい。

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人っ子一人いない崇人地区を離れ、バスで繁華街へ。四条のメインストリートは道路の拡幅工事中で、ただでさえ車と人通りの多い通りは大渋滞。バスも海外から観光客のみなさんを中心に大混雑だった。さまざまな言語が交差する車内には京都マップを手にした人の姿が目立つ。あらためてこの街が国内有数の観光地であることがわかる。
京都の繁華街ではリュックを背負ったり、大きなキャリー引いた旅行客に混じり街を散策する。歩くことが楽しい街はいい。だが、ぼくの故郷である浅草と同様、いかんせん中心部には人が多すぎる。

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京都はまた密かに路上観察的な楽しみ方もできる街である。崇人地区もそうだが、町中の路上には、東京ではあまり見かけなくなった光景も多くみることができる。看板の文字、防火用のバケツ、路上に置かれた草花、瓦屋根、古い板塀。歩きながら、家々を見上げ、いちいち足を止めるので、なかなか目的地にたどり着けない。

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京都市美術館では現代アート展「PARASOPHIA」が開催中。京都で行なわれる現代美術の国際展として注目を集めたエキシビションだ。いくつかの会場で行なわれている本展だが、みどころはなんといっても京都市美術館の展示で、そして普段は公開されていない、地下室での展示だろう。美術館の前の道路には平安神宮の大鳥居があり、広場にはやなぎみわの舞台「日輪の翼」の移動舞台であるトレーラーが置かれている。これは無料でみることができる。付近には図書館、美術館、動物園などが多く点在した、東京でいえば上野のような一大文化ゾーンとなっている。

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京都に行くと、ついつい大阪にも足を伸ばしたくなる。まずは京都市営地下鉄などを乗り継いで、千里中央へ。駅ビルのペデトリアンデッキの向こうにはHankyuのビルのファサードには、毎回目がいってしまう。見事の建築だと思う。京都四条河原町から快速で30分ほどで、このエリアに着いてしまう。あらためて京都と大阪は近いと思う。

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そして、万博公園で。千里中央からモノレールで5分ほど。高台から見下ろす岡本太郎の「太陽の塔」。70年大阪万博のシンボルだが、このときの「人類の進歩と調和」といテーマを見事に否定した、縄文の土器のようなプリミティブな巨大オブジェが、この祭りのあとに21世紀の今もこの地に残っているというのはなんとも皮肉なことだ。

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万博跡地は現在、市民が憩える植物公園になっている。太陽の塔の脇にはこんなベンチも。

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万博開催当時の施設は、太陽の塔と建築家前川國男が設計した鋼鉄館が、当時を伝える記念館としてEXPOパビリオンとして遺る以外は、ほとんどないが、当時のメイン会場であった「おまつり広場」の大屋根の一部が太陽の塔の裏手のスポーツ広場の中に、一ユニットだけぽつりと遺されている。高さ40メートルの位置に、長さ290メートル、幅180メートルを誇っていた鉄骨製の大屋根の一部だ。大阪万博開催当時は、この大屋根の下に何万人という人々が集まった。

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大阪万博、日本万国博覧会。77つの国々が参加し、春から秋の季節をまたいだ183日の会期中に、世界中から6,500万人もの人が訪れた。この池の当時の面影を伝えるもののひとつ。彫刻家イサムノグチが設計した12器の彫刻噴水中、6器のオブジェが今も園内に遺る。

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それと大阪に訪れたら、ぜひ大阪市営地下鉄御堂筋線ホームのアーチ型の天井に残る、駅ごとに趣向を凝らしたシャンデリアもみていただきたい。梅田駅のものは昨年改修のため撤去されたそうだが、今回ぼくが確認しただけでは、淀屋橋駅、心斎橋駅、天王寺駅にはまだ残っていた。

かたち

2015年04月10日 

かたちは、とても奥行きの深い言葉だと思う。
見て触れる物の姿から、見て触れない物事の姿まで、いろんな意味を持つ言葉。

フェティッシュ

そのなんとも言えない愛嬌あるかたちに心惹かれて、
我が家にやってきた2体のフェティッシュ、Fetish。
ここ2年ほど、定期的に根室に通っている私は、guild Nemuroでフェティッシュを購入しています。

インディアンの部族の内の一つ、ズニ族がお守りとして持っているフェティッシュは、
石や貝殻やシカの角などを材料にしながら、動物の形が彫られています。

 

……ズニ族は猛獣を恐れていた。
そこであるとき雷を動物に落とし、動物達を石にしてしまう。
けれど、動物の魂は石の中で生きていた。
以来、ズニ族は動物の形をした石を見つけると、
その秘められた力を信じて持ち去った。
やがて道具を手にいれたズニ族は、石を削って動物のかたちを作ることで、
力を手に入れようとしてきた。

 
私の手元にあるフェティッシュは、そのかたちです。
私は熊を持っていますが、いろんな動物のかたちがあって、それぞれに意味合いも違ってきます。
これがまた触っていると心が落ち着いていくので、とても不思議です。

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自然のかたちというと、もうひとつ想い浮かぶのはこの作品です。

アクリルの中に、本物の綿毛のタンポポが封印されているこのオブジェは、
井上隆夫さんの作品で、3、4年前に恵比寿のPOST(当時はlimArt)で購入しました。

タンポポはかたちが一定になれない、流れゆく消えてなくなる儚い存在です。
まさにそれが生の躍動でもあるわけですが、この作品は、
アクリルという道具によって時間が支配され、かたちが生まれている。
そのかたちが私はうつくしいと思いました。

そして、
これを眺めていたら、ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)でもうすぐ始まる、
『クリエイティアーネ・レーア 宙をつつむ』が本当に待ち遠しくなります。

いつの時代も、命や存在の根源にかかわるかたちを見ると
祈りたくなるのがまた、人間の性だと思います。

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加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平