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Diary

インディペンデントな出版物がもつ力

2015年02月20日 

DSC_0735アートやデザイン、そしてファッションと取り上げる題材もさまざまだが、不思議と統一感のある誌面でどこからめくってみても独自の感性が感じられる、インディペンデントな出版物 <here and there>。2002年にvol.1が出版され、これまでvol.11までがリリースされている。雑誌here and thereの視点は、その対象がモノでであったり、人であったり、コトや街であってもブレることがない。今までにもパリであったり東京であったり、編集者の視点からのその町の捉えかたは愛着のある温かみあふれたものだったし、それはそこに暮らす人々との密接なつながりの中から生まれる人間らしい血のかよったものであった。
特にお気に入りのvol.7は、パリのインディペンデント・マガジンであるパープルの元編集長エレン・フライスの東京の街についてのコラム。そしてエディーターである林央子氏の根津ガイド。二人のコラムに共通するキーワードは「根津」。根津とは東京文京区に位置する町の名前だ。それぞれの町がそうであるようにこの町もいくつかの町名が重なりあって構成されている。谷中、根津、千駄木、上野桜木、池之端。10945465_782693521812877_6269703469224930130_o根津の路地風景。
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台東区と文京区にまたがるこれらの地域には戦後間もない頃の古い町並みが残り、下町とも山の手とも区別がしがたい風情が漂うなんとも味わい深いエリア。近年この町には東京の中心からさまざま人やモノそしてコトが流れ込んでいて、町が動くそんな音が聞こえる刺激に満ちている。それはまた刺激を生むための刺激をもとめるそんな一過性の流行ではない、いつの時代にも変らない普遍的な空気がある。だからこそ自身のクリエーションに自らが暮らす町や都市のにおいを大切にしながら、それを作品に反映させることに長けた、カリフォルニアの映像作家であるマイク・ミルズや、ベルリンとパリを拠点に活動するクリエーター集団BLESSやスーザン・チャンチオロ、伝説的なインディペンデント・マガジンの編集者の一人であったエレン・フライスなどが積極的に誌面作りに関わってきたのだろう。昨年、林氏がつくりあげ、水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催された「拡張するファッション」展は、here and thereが立体に立ち上がったようなエキシビションだった。フランスのファッション思想家 パスカル・ガテンによる美術館の監視員さんの制服のワークショップ、ホンマタカシ氏による90年代を再考した写真。ZINE、パーソナルな視点で描かれた社会に小さな革命を起こす存在としてのインディペンデントな出版物。ミランダ・ジュライ、ライオットガール、怒れる少女たち、ガーリームーブメント。スーザン・チャンチオロ、ファッション、ペインティング、彫刻などのさまざまな自発的メディアによる実践。それらがかつても今も、とてつもない勇気を少女たちに与えた存在であったことは想像に難くない。10974655_782692065146356_5611556786446640050_o

水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催された「拡張するファッション」展(2014年)より。
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here and thereの本作りは、小さな町のコミュニティーやサークルにも似て、同じ目的を持ったもの同士が、異なる手法で、だが同じ方向を向いて歩いているようなスタンスを感じる。だからこそ東京という町に生まれて、小さくても良好なコミュニティーを期待する自分のような存在にも、この雑誌がより身近で好ましいものにうつるのだろう。
2012年にvol.11が発行されて、早くも3年が経とうとしている。次ぎなるhere and thereの誌面から発せられる静かな挑発をもった言葉とビジュアルを心待ちにしている読者たちは少なくない。ぼくもその一人には間違いがない。DSC_0736
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加藤 孝司加藤 孝司
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