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Diary

歴史的建築のディテール

2014年12月20日 

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ものごとには全体があり、その細部としてのディテールがある。全体は多くの場合、まっさきに人の目や気を引き、ものごとの大枠を印象づけるものになる。一方、細部は全体を構成する一要素であり、全体とは必ずしも構造との一体関係はもたないものの、細部を構成するものは全体であり、そのディテールの精度が高ければ高いほど、全体としての魅力を増す。そして時に人びとは細部にこそ釘付けになる。以上は、建築をイメージした場合における全体と細部の簡単な考察だが、全体における細部=ディテールは、その総体からみれば小さな要素には違いがないが、その要素の総体こそが全体となる。全体と細部の関係性を考えるとき、細部の総体であり、小さなコスモスとしての建築をイメージするとなんとなくわかりやすい。本稿はそんな総体としての建築の全体ではなく、細部に関する覚え書きである。

開館30周年の記念の年を昨年に迎え、3年の年月を経て先きごろリニューアルオープンした東京都庭園美術館。かつてより都心にありながら緑豊かな庭園の中に設けられた美術館として多くの人びとに親しまれてきただけに、待望のオープンとなった。
今回の大規模改修では本館の改修と新館の改築がなされ、新しい魅力をもった都心の美術館として生まれ変わった。東京都庭園美術館は皇族朝香宮邸として1933年に竣工。その後、さまざまな変遷を経て1983年より東京都庭園美術館として開館した建物。

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すこしひしゃげたドアノブのディテール。かつてここが人が暮らしていた家であることを想起させるアールデコ建築。

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緑豊かな庭から差し込む光と窓枠の陰、ドアとラジエーターの垂直が重なり合う。波の紋のラジエーターカバーはもちろん創建当時のもの。このお屋敷にはルネ・ラリック作のガラスレリーフ扉や、本邸の内装の一部を担当したアンリ・ラパンの香水塔、大食堂のエッチングガラスなどが、今回のリニューアルに合わせ現代の職人の手により修復・復原されている。

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棚など使用頻度の高いことが想像される家具が設えられた書庫も、品がよく味わいのある細部を構成している。こんな人の手の痕跡を感じる設えなどにもこの建築がもつ奥深い魅力を感じることができる。

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本館二階北の間床のタイルも近年ではカーペットに覆われていたディテールで、今回の改修に際に新たに日の目をみることになった場所。

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立ち入りが出来ない部屋があるのも、この建築が80年以上の長い歴史をもつ建築だからこそ興味をそそる、建築のディテールである。

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そんな、この建築がもつディテールの魅力を活かした展示が、このたびのリニューアル記念の展示として現在開催中の「内藤礼 信の感情」展だ。
本展では絶大な人気を誇る内藤礼の最新作としての注目の高さに加え、その展示方法もとても魅力のあるものだった。今回改築された新館での絵画展示も素晴らしいものであったが、本館での展示はとてもイマジナリーなものとして記憶に残った。
内藤作品としておなじみの小さな人形がこの歴史的建築物の中に置かれ、観覧者はガイドマップを片手にそれを探して歩くという指向のもの。鏡の前や暖炉の上、コーナーや床など。ひとつ間違えれば見過ごししまいそうな場所に、なんのキャプションもなく、それらの作品をひっそりと忍び込ませている。
それがあたかもこの建築の小さなディテールとしてチャーミングさをもちながらしっくりと馴染み、だが空間に異化をもたらしつつ、その空間を豊かなものにしていた。

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近年、内藤がたびたび手がけている「ひと」は大きさにして6センチほどの木彫りの作品。ぼくがはじめてこの「ひと」を目にしたのは2013年の「タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)」でのこと。広島県立美術館で行なわれて『ピース・ミーツ・アート!』展に出展されていた。同作品は広島平和記念資料館が所蔵する被爆したガラス瓶と「ひと」、照明、花などで構成された作品だった。高熱で焼かれぐにゃりと溶けたガラス瓶のそばに寄り添う人かたの木彫りの人形。広島生まれの内藤礼が初めて原爆という問題に向き合った作品だという。鏡、あるいはガラス、そして庭や私たち。木彫りの儚げな「ひと」の眼差しのその先が気になる。

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1963年に建てられた新館は取り壊され、新たな新館の構想には現代美術館の杉本博をアドバイザーに迎え、現代的なホワイトキューブなどをもった新しい建築に生まれかわった。
本館から新館へと繋ぐ渡り廊下の庭園に面したガラス壁は、杉本博がデザインした三保谷硝子製。うつろいゆく光とそれをうけて陰影をつくる波板ガラスの影が彫刻のようなおもむきをもった、これ自体が作品と言っても過言ではないユニークなもの。本館のアールデコ様式をもったルネ・ラリックらの彫刻、そして本館と改築された新館とを印象的に繋ぐガラスというマテリアル。80年の時を越えて呼応する建築のディテールとディテールがこの建築をより豊かなものにしていることは間違いがない。

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新しく生まれ変わった東京都庭園美術館で建築が示す全体とディテールの関係性について思いを馳せてみるのも一興だろう。

アール・デコ建築をみる 開催中〜2014年12月25日(木)
内藤礼 信の感情    開催中〜2014年12月25日(木)

東京都庭園美術館
東京都港区白金台5-21-9

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Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平