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Diary

新潟→宮城→岩手→福島

2014年12月25日 

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はじまりは、北陸・新潟。舞踏団Noismの新作公演へ。Noismは、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館を拠点に活動する、日本で唯一の劇場専属舞踏団だ。

今回、Noismの身体性に肉付けされるのは、宮前義之さん(ISSEY MIYAKE)による衣装、Steve Reichと池田亮司さんの音楽(これは第1部のみ/公演は2部構成だった)。3者の共鳴に私は心射抜かれて、ずっとヒリついていた。

太古の昔、みんな踊る人で、歌う人で、作る人だった。それがいつしか文明の進歩に合わせて、人々にはそれぞれ役割が生まれ、それは芸術の世界においても表現者と鑑賞者に分かれていったわけだけれど、こんなに気持ちがざわつき、ヒリついてしまうのは、きっと自分の根底にはその太古の昔から受け継いできた血が流れているからだと思う。私は舞踊家じゃない。だけどその流れている血が生理的に反応してしまうんだと思う。

芸術の本質を垣間見た夜。自分の故郷でもある新潟でNoismと対峙できて本当に良かった。

 

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その翌日からは、宮城・岩手・福島の東北3県めぐりと続いた。震災の痛みを携えながら、そこに生きる人々の、強くてやさしい眼差しを目撃することとなった。

まずは、宮城県塩竈市へ。国内有数の港湾都市、塩竈(写真上)。その塩竈と日本三景・松島を結ぶ観光遊覧船、そして塩竈の離島である浦戸諸島とを結ぶ、市営汽船の発着所として親しまれているのが、マリンゲート塩釜(写真下)だ。私はここから、浦戸諸島で一番大きい島・寒風沢島を目指した。

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島はいい。陸の文化とは違った生態系から成り立つ、海の文化、そしてそこで育まれた島人の生きる知恵がある。営みがある。

島と言えば、翌日の岩手県大槌では、大槌湾にぽつんと浮かぶ 蓬莱島、通称ひょっこりひょうたん島(写真下)を望んだ。NHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルにもなった島で、東日本震災前は徒歩でも行き来ができた。現在は孤島になってしまったけれど、復興のシンボルとして広く認知されている。

その島は灯台のように思えた。どうか、どうか、この町に生きる人々を光の射す方へと。

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最後は、福島県会津若松と喜多方へ。
郡山からの電車の車中は、険しい白の世界。故郷・新潟の風景に近しくて、私には心地がよかった。

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喜多方で食べた、喜多方ラーメンの美味しいこと! その余韻をだいぶひきずりながら、西会津芸術村へ。

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一目見て、この施設の佇まいに惚れてしまった。

西会津芸術村(写真上)とは、いわば文化交流施設だ。廃校となった木造の中学校を、 創作活動、ギャラリー、地域文化の育成。グリーンツーリズムの拠点などのために活用している。ちょうど、伺ったときは、御年101歳、美術家の篠原桃紅さんの個展『篠田桃紅 版画の世界』(〜2015年1月27日まで)が行われていた。古い木造空間に共鳴する篠原さんの作品たち。深々と積もる雪のごとく、作品を見ていると心に何かがぽってりと積もっていく。

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外へ出たら、陽が暮れようとしていた。校舎の中を照らす灯りに、生きる力をもらった気がした。

歴史的建築のディテール

2014年12月20日 

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ものごとには全体があり、その細部としてのディテールがある。全体は多くの場合、まっさきに人の目や気を引き、ものごとの大枠を印象づけるものになる。一方、細部は全体を構成する一要素であり、全体とは必ずしも構造との一体関係はもたないものの、細部を構成するものは全体であり、そのディテールの精度が高ければ高いほど、全体としての魅力を増す。そして時に人びとは細部にこそ釘付けになる。以上は、建築をイメージした場合における全体と細部の簡単な考察だが、全体における細部=ディテールは、その総体からみれば小さな要素には違いがないが、その要素の総体こそが全体となる。全体と細部の関係性を考えるとき、細部の総体であり、小さなコスモスとしての建築をイメージするとなんとなくわかりやすい。本稿はそんな総体としての建築の全体ではなく、細部に関する覚え書きである。

開館30周年の記念の年を昨年に迎え、3年の年月を経て先きごろリニューアルオープンした東京都庭園美術館。かつてより都心にありながら緑豊かな庭園の中に設けられた美術館として多くの人びとに親しまれてきただけに、待望のオープンとなった。
今回の大規模改修では本館の改修と新館の改築がなされ、新しい魅力をもった都心の美術館として生まれ変わった。東京都庭園美術館は皇族朝香宮邸として1933年に竣工。その後、さまざまな変遷を経て1983年より東京都庭園美術館として開館した建物。

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すこしひしゃげたドアノブのディテール。かつてここが人が暮らしていた家であることを想起させるアールデコ建築。

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緑豊かな庭から差し込む光と窓枠の陰、ドアとラジエーターの垂直が重なり合う。波の紋のラジエーターカバーはもちろん創建当時のもの。このお屋敷にはルネ・ラリック作のガラスレリーフ扉や、本邸の内装の一部を担当したアンリ・ラパンの香水塔、大食堂のエッチングガラスなどが、今回のリニューアルに合わせ現代の職人の手により修復・復原されている。

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棚など使用頻度の高いことが想像される家具が設えられた書庫も、品がよく味わいのある細部を構成している。こんな人の手の痕跡を感じる設えなどにもこの建築がもつ奥深い魅力を感じることができる。

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本館二階北の間床のタイルも近年ではカーペットに覆われていたディテールで、今回の改修に際に新たに日の目をみることになった場所。

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立ち入りが出来ない部屋があるのも、この建築が80年以上の長い歴史をもつ建築だからこそ興味をそそる、建築のディテールである。

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そんな、この建築がもつディテールの魅力を活かした展示が、このたびのリニューアル記念の展示として現在開催中の「内藤礼 信の感情」展だ。
本展では絶大な人気を誇る内藤礼の最新作としての注目の高さに加え、その展示方法もとても魅力のあるものだった。今回改築された新館での絵画展示も素晴らしいものであったが、本館での展示はとてもイマジナリーなものとして記憶に残った。
内藤作品としておなじみの小さな人形がこの歴史的建築物の中に置かれ、観覧者はガイドマップを片手にそれを探して歩くという指向のもの。鏡の前や暖炉の上、コーナーや床など。ひとつ間違えれば見過ごししまいそうな場所に、なんのキャプションもなく、それらの作品をひっそりと忍び込ませている。
それがあたかもこの建築の小さなディテールとしてチャーミングさをもちながらしっくりと馴染み、だが空間に異化をもたらしつつ、その空間を豊かなものにしていた。

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近年、内藤がたびたび手がけている「ひと」は大きさにして6センチほどの木彫りの作品。ぼくがはじめてこの「ひと」を目にしたのは2013年の「タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)」でのこと。広島県立美術館で行なわれて『ピース・ミーツ・アート!』展に出展されていた。同作品は広島平和記念資料館が所蔵する被爆したガラス瓶と「ひと」、照明、花などで構成された作品だった。高熱で焼かれぐにゃりと溶けたガラス瓶のそばに寄り添う人かたの木彫りの人形。広島生まれの内藤礼が初めて原爆という問題に向き合った作品だという。鏡、あるいはガラス、そして庭や私たち。木彫りの儚げな「ひと」の眼差しのその先が気になる。

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1963年に建てられた新館は取り壊され、新たな新館の構想には現代美術館の杉本博をアドバイザーに迎え、現代的なホワイトキューブなどをもった新しい建築に生まれかわった。
本館から新館へと繋ぐ渡り廊下の庭園に面したガラス壁は、杉本博がデザインした三保谷硝子製。うつろいゆく光とそれをうけて陰影をつくる波板ガラスの影が彫刻のようなおもむきをもった、これ自体が作品と言っても過言ではないユニークなもの。本館のアールデコ様式をもったルネ・ラリックらの彫刻、そして本館と改築された新館とを印象的に繋ぐガラスというマテリアル。80年の時を越えて呼応する建築のディテールとディテールがこの建築をより豊かなものにしていることは間違いがない。

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新しく生まれ変わった東京都庭園美術館で建築が示す全体とディテールの関係性について思いを馳せてみるのも一興だろう。

アール・デコ建築をみる 開催中〜2014年12月25日(木)
内藤礼 信の感情    開催中〜2014年12月25日(木)

東京都庭園美術館
東京都港区白金台5-21-9

恋しい根室を懐に。

2014年12月10日 

先週末は恵比寿と品川へ向かいました。
私と根室を繋いでくれた、ジュエリーデザイナー古川広道さんのブランド、AVMの展示会へ。

15th Anniversary EXHIBITION at POST
2014年12月2日(火)→12月7日(日)

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AVM、15周年記念、おめでとうございます。

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展示空間に足を踏み入れた瞬間、シャープでエレガントな根室の街の匂いがして、清々しい気分に。古川さんのジュエリーは、人の営みと自然とが重なり合う部分、その結び目が深く刻まれているような感覚があって、すごく身体に馴染む。野生的な色気が宿っているところが好きだ。

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今回の展示会ではシルバーのリングをオーダーした。リングの描くラインが、本当に鋭くて色っぽい。来春の完成とのこと。春と言えば根室は流氷の季節。私がもっとも好きな深い蒼の広がる根室で、リングを手にしたいと思う。

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恵比寿のPOSTを後にして次に向かった先は、品川駅改札内にあるPORTER STANDへ。古川さん主宰のAVM、イラストレーター・塩川いづみさん、アーティスト・ヤブノケンセイさんによる、根室の大自然にインスパイアされて生まれたアイテムたちを観るのが目的だ。

Peace On Earth Inspired by NMR at PORTER STAND
2014年12月5日(金)→ 12月25日(木)

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根室にある自然のカタチ。そのカタチがPORTERの限定アイテムとなって並んでいる。私はここで塩川さんが描いた根室の風景と、AVMによる鹿の角の留め具がついたバッグ、そして根室に飛来するワタリガラスが箔押しされた銀色パスポートケースを購入した。ヤブノさんの新作もすごくチャーミングだった。

身につけるもの、手にするもの。そのひとつひとつは、いつだって心の真ん中で納得していたい。
そして東京の冬晴れには、根室の深い蒼は似合うと思う。

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Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平