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実験精神をもったデザイン
- 2014年東京秋のデザインウィークより-

2014年11月05日 

今年も秋のデザインウィーク期間中には都内各所でさまざまな展示会やエキシビションが開催された。
その中から、実験精神をもったデザインにフォーカスして、いくつかの作品を紹介したい。

#SHOWCASE
まずは、代官山で開催されたデザインのエキシビション「SHOWCASE」から。SHOWCASEは、2012年まで東京で行なわれていたデザインのトレードショー「DESIGNTIDE」の中心人物の 一人であった松澤剛、山田遊、尾原史和らが発起人となって2013年より開催されているデザインのエキシビション。

会場には主催者である彼らの考えのもと集められたプロダクトが展示される。入口付近には彼らによるこのエキシビションに対する宣言文が掲げられ、来場者はデザインより先に本展のキュレーターたちの言葉=考えに向きあう。SHOWCASEがデザインウィーク期間中に行なわれているデザインの展示と異なるのは、プロダクトデザイン、建築、ファッション、アートといった発表される製品のジャンルの幅広さだけでなく、デザインを通じてこの思考と対峙するスタンスである。
SHOWCASEはそのものの背景にある、デザインの社会的な意義やあるさまざまな社会的状況に 向き合わせる。もちろん、エキシビションに展示されるものが各デザイナーの最高度の純度の思考をもって突き詰められ、ものとしての魅力をもったものであることは大前提としてある。

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建築家・長坂常「for LLOYD」。オランダ・アムステルダムにある「ロイドホテル」のための竹をマテリアルとしたプロダクトのスタディ(窓の外の街灯とのコントラストも面白かった)。

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建築家・中村 竜治による「柱の間のベンチ 2」。柱の間に挟まり自立することで、複数の筒が互いに関係しあい、しなやかな座り心地のベンチになった。

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スイスのカルロ・クロパスのカトラリーと調理器具のシリーズ「Palutta」。スイスでも失われつつあるウッドクラフトの伝統的な技術と、彼らが日本から持ち帰った漆の技術が融合した。織物も彼の作品。

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台湾のプロダクトデザイナーPILI WUは、ハンス・J・ウェグナーもリデザインした中国の伝統的な椅子のアームと、現代の屋台で使われるようなプラスチック製の安価なスツールとを同じ普遍的なデザインととらえ、自国の高度な工業技術を用いて精巧にリメイクした。

#ディー・イントゥイティファッブリック @ANY TOKYO
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こちらも今年で2回目となるエキシビションを芝の増上寺で行なった「ANY TOKYO」から、オランダを拠点に活躍する3人組の女性デザイン集団「DE INTUITIEFABRIEK」(ディー・イントゥイティファッブリック)。2012年にアムステルダムで設立され、日本では本格的な紹介は初となる、今や世界的にその名が知られるデザイングループだという。ぼくは今回初めて知ったのだが、彼女たちの作品は純粋なクラフト作品であっても、その線は寸分の狂いもなく完璧なフォルムをしており、それが直線で構成された作品であるとき、その線は完璧なラインを描いていることに気づく。

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写真はエスプレッソ用のカップからはじまるカップなどのセラミックのテーブルウェア「SUM」で、一番小さなサイズはぐい呑みに使ってもちょうど良さそうな磁器製のカップ。ヨーロッパではカップをデザインする際に、まずはエスプレッソカップでスタディすることが多いのだという。また、製造工程の仕事量の違いが価格に反映されることに着目し、同じ製品に、釉薬の量や装飾の違いなど異なる仕上げを施すことで、職人の仕事量の差異をあえて生み出し、製品の価格に個体差をもたらす試みもしている。

ANY TOKYOの展示では、カップボードの中のような整然とした陳列方法と、乳白色から薄いグレーを経て、濃紺の色に至るグラデーションの、釉薬の実験ともいえる試みが可視化されていて、ひと際目をひく美しいインスタレーションがなされていたのが印象に残った。
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DE INTUITIEFABRIEKの「WHIRLABOUT」。
キャンドルの炎が生み出す上昇気流という熱の法則を利用して真鍮製の風車を回転させる、子供のころに思い描いたファンタジーという寓意に満ちた作品。オランダの国はオランダ人がつくったいわれる発想力豊かなオランダ人気質と、干拓の土地オランダのそこかしこでみることができる風車を思い起こさせる作品。

#「TOKYO L」 @エーランド2014
古くから革靴産業の集積地として知られる浅草で行なわれている、革のものづくりの祭典「エーラウンド」から派生した革をマテリアルとしたデザインプロジェクト。デザイナーと革問屋、職人ら8組のコラボレーションにより革の新しい可能性に向き合いプロトタイプを制作発表した。建築家の荒木信雄や、書店主江口宏志や、注目の若手デザイナー野本哲平(民具木平)らがデザイナーとして参加。
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普段見えているのに見えていないものとして扱っているペンダントランプの吊り下げコードを革でくるんだ、江口宏志×トートーニーによる「ランプ」作品。

#「現代の錬金術師たちが見せる世界の変容」 @シボネ青山
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魚の皮とガラス真鍮の組み合わせによる水差し。

シボネでみたオランダを拠点に活動するFormafantasma(フォルマファンタズマ)の作品は、展示方法もふくめ、まさに実験精神に満ちた作品であった。ここでは機能のもとにある実用はさほどかえり見られず(洗うことのできないテーブルウェアなど)、純粋な素材とフォルムとの実験がデザインの新しい可能性を思考するものとして試みられていた。そのアイデアのもとになったのは、プロダクトの素材と、プロダクトの素材としてはみられることのなかったものとの関係性。彼らの作品にもその関係性に問いを投げかける姿勢を感じることができる。

タイトルの錬金術とは、それまでプロダクトの素材としては考えられてこなかった素材の可能性に着目し、それを鮮やかなデザインに変容させる彼らの手腕になぞらえられていることは言うまでもない。

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牛や豚の膀胱と金属である真鍮を組み合わせた水差しと、魚の皮をヴェジタブル鞣しをしてつくった革を使ったスツール。神秘主義的な謎に満ちたプロダクトであり、アートピースだ。

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小麦粉などを混ぜ合わせ低温で燃焼させてつくられたテーブルウェアのシリーズ。農作物と生活道具との間における循環的な関係を探る試み。

#「Material & Inspiration」 @マジス東京ショールーム

そして、最後に、2014年のこの秋の東京のデザインショーの中で、個人的にナンバーワンをつけたいマジス東京ショールームで行なわれた「マテリアル&インスピレーション」展(2014年11月7日まで開催)。
本展はマジス社で製品を発表する幾人かのデザイナーが手がけるプロダクトを中心に、そのインスピレーションとなったものや、実際のマテリアルを展示したもの。
その中でもこれまでもマジス社で作品を発表してきたフランス人デザイナー、ロナン・ブルレックとエルワン・ブルレックの兄弟による新作家具シリーズ「Officina」が、中心的な作品として展示され話題になった。

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今回展示されるOfficinaの亜鉛メッキ塗装のフレームには、ハンマーで鉄を打ち付けた際にできる跡が荒々しく残る。その痕跡が鉄という素材がもつ力強さとともに、ブルレックの作品らしいエレガントさをも醸し出している。

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鉄を鍛造してつくられる鉄製のフェンスなどにインスピレーションを得て着想したもので、伝統的な鉄工所で作られたもの。Officinaの開発の背景には、ものづくりの現場においてハイテクとスピードが要求される風潮の中にあって、ローテクでスローな伝統技術に対して目を向けなくなってきている現状に対する問題意識があったという。

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ロナン&エルワン・ブルレックの「Steelwood chair」。そのスチール部分。イタリアのマジス社は創業当初からプラスチックの加工とともに、スチールロッドの加工も得意とすることで知られる。

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左ハイメ・アジョン「Pina」、右コンスタンティン・グルチッチ「Chair_one」と金属パーツ。

この秋のさまざまなスタイルのデザインの展示が行なわれた。企業や団体が自社が手がける新製品を世に問い発表する場であることの多いデザインウィークだが、今回のマジスの展示では、自社の製品の新作発表とともに、過去の製品のアーカイブを展示した。それだけでなくそのインスプレーションソースとマテリアルを並列的に展示してモダンなエキシビションとした。そんな自社のアーカイブやものが生まれる根源であるデザイナーのアイデアと向き合う企業としての姿勢に個人的にはひかれたし、そこにデザインの現場のなまなましいリアリティを感じた。
そしてそんなところに、ものの豊かさをある意味で実現してきた大量生産大量消費時代へ内省、サスティナブル、持続可能といった現代的な課題に向き合うことと同様な、ものづくり企業としての社会におけるスタンスの表明を読みとった。これらの作品から感じたのは、過去を振り返り、既存の価値を問い直すというスタンスも、こんな時代にあっては、前向きでポジティブな実験精神につながっている、そんなことをあらためて考えさせられた今年のデザインウィークであった。

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Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平