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Diary

海を見下ろす丘の上に建つ異形の建築

2014年09月05日 

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鹿児島県鹿屋市輝北町にある展望施設、輝北天球館に行ってきた。
ここを訪れるまで、この施設のことは全く知らなかったのだが、訪れてみてあらためて人が造るものである建築がもつ存在感の強さに驚いた。

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近づいてみると、この構造物を支えている、複雑に交差する幾本ものコンクリートの柱が見えてくる。その足元は小さな広場のようになっている。
細い手すりのついた外階段は、ちょっと高所恐怖症の人には恐怖を感じるくらい、足元は頼りない。その階段をのぼりきると、大人の胸元ほどの高さのコンクリート造の塀に四方を囲まれた展望テラスが見えてくる。
塀に近づいてみると、ひときわ小高い丘の上に建ったこの構造物が、どれほど高い土地に建設されたかが分かってくる。西に桜島を抱く鹿児島湾(別名・錦江湾)を、東には牧草地が広がる牧場が見える。そして南北を貫くように巨大風車が、ただ音もなくゆっくりと回転している。

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輝北天球館は鹿児島県出身の建築家 高崎正治が設計し、1995年に開業。日本一星空が美しいと評されるこの場所で、建築と土地がもつエネルギーを交感させる、精神的な意味でのゼロ地点をコンセプトに計画されたという。高崎氏は学生であった70年代に、物こそ人であるという「物人宣言」、イギリス人建築家ピーター・クックとの出会い、人間の精神性に深く根ざした前衛的な建築への指向を経て、1990年に高崎正治建築設計事務所を設立すると、バブル後期まっただ中の少子高齢化により過疎化する地方都市において、地域や風土、人間の精神性と宇宙との関係性をもった持続可能な建築を模索し始める。そんな時代に計画されたのが鹿児島県鹿屋市輝北町(きほく)の丘の上にたつ輝北天球館である。

4階の天体観測ドームに、口径65センチのカセグレン式反射望遠鏡をもつ天体観測施設を核施設に、自由に立ち入ることのできる展望テラスを備えている。週末の夜には夜が更けるまで天体観測ができるという。
周辺にはアスレチック広場や、バンガローが点在するふれあいの森などの、この土地がもつ自然のダイナミックさを堪能できるコミュニケーション施設がある。

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訪れた日は平日であったが、周辺の町から遠く離れた丘の上にありながら、地域の人らしいファミリーが公園に訪れ、この場所での景観を楽しんでいる姿が見受けられた。

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丘の上には、人里離れた山の中や、海岸線などに近ごろよく目にするようになった、巨大風車が遠目には音もなくゆっくりと回っている。自然豊かな場所ならではの風景だが、少し異様な景色にもみえる。

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のどかな田園風景の中に見えるコンクリートのエッジが驚くほどシャープだ。

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見た目にも複雑な形状をしたこの構造物建造のためにコンクリートの型枠をどのように設置したのか、立地といい一見しただけでも想像ができるが、とても謎の多い建築物だという。
周辺の町からここを訪れるための遠い道のりの苦労もそうだが、実際に目にするまでは、この建造物のすごさは多分わからない。日本にも謎に満ちあふれた、魅力的な建築がまだまだたくさんある。次は星空を愉しむことのできる夕暮れ時に訪れてみたい。百聞は一見に如かず。ぜひ、足を運んで体験してみてもらいたい建築である。

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輝北天球館
所在地:鹿児島県鹿屋市輝北町市成1660-3
輝北うわば公園内

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Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平