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Diary

忘れてはならないということを意識することで忘却と向きあう

2014年08月05日 

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前回のエントリーでも少し紹介した3年に1度、横浜の街を舞台に行なわれるアート展「ヨコハマトリエンナーレ2014」が、先頃開幕した。
タイトルは「華氏461の芸術::世界の中心には忘却の海がある」。これはアメリカのSF作家レイ・ブラッドベリが、1951年に書いた近未来を舞台にした同名のSF小説にインスパイアされたものだという。
今回は世界的な現代美術家 森村泰昌をアートディレクターに迎え、横浜美術館と新港ふ頭展示施設「新港ピア」をメイン会場に、世界中からさまざまなアートが展示、発信される。

ヨコハマトリエンナーレの楽しみのひとつが、メイン会場を飛び出して、街なかで展示されるアート。今回も二つのメイン会場から、歩いて行けないこともない距離にある場所に、「まちにひろがるトリエンナーレ」として開催。BankART Studio、象の鼻テラス、急な坂スタジオ、横浜創造都市センターなどの場所で、トリエンナーレの開催時期とほぼ連動して、ユニークなアート作品を楽しむことができる。

ヨコハマトリエンナーレ2014の構成は「ふたつの序章と11の挿話からなる「忘却の海」の漂流譚」とコピーがあるが、横浜美術館前と横浜美術館グランドギャラリー内の二つの序章に加え、横浜美術館と新港ピアにおける11のセンテンスをもった展示コーナーから構成されている。
そのなかから、いくつか気になった作品を紹介したい。

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こちらは横浜美術館での第1話「沈黙とささやきに耳をかたむける」、キューバ出身のアメリカ人アーティスト、フェリックス・ゴンザレス=トレスの作品。二つの積まれた紙束は、観客が触れて、持ち帰ることのできる作品で、作品が人々の手に渡り、共有されることで成立するというコンセプトをもったもの。むろん、このあと会場がこのポスターを筒状にまるめたものを手にした人々で溢れたことはいうまでもない。

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「第3話:華氏451はいかに芸術にあらわれたか」は、とりわけ今回のトリエンナーレの展示のなかでも社会的な背景をもったテーマを扱った、見応えのあるセンテンスのひとつ。本展のメインタイトルである、華氏451とは、紙が自然発火する温度摂氏233度=華氏451度に由来している。
先のブラッドベリが書いた「華氏451度」というタイトルの書物は、近未来の世界において、読書が禁止され焚書(ふんしょ・書物を燃やすこと)が行なわれている世界を舞台に描かれている。その世界で人々は、本や新聞ではなく、耳にいれられた小型ラジオと巨大なテレビから流れる一方通行の情報を得ているにすぎない。それはいつの時代においてもある種共通する、切迫感をもった時代の空気を反映している。

それは現在の日本においても同様で、「隠蔽された真実」「時代の権力」「検閲」「忘却」などを批判的に見つめ直すという問題意識をふくんでいる。
なかでも現代美術画廊オーナーの大谷芳久コレクションとして出品された、戦中に出版された文芸書の展示コーナーは、本展のもうひとつのテーマ「忘却」を考える上でそれを強く意識させて興味深い。

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横浜美術館から無料バスなどで行くことができる、今回のトリエンナーレのメイン会場のひとつ「新港ピア」にも充実した作品群が展示されている。

やなぎみわの舞台「日輪の翼」の巨大な舞台装置が置かれたエントランス近くのブースに展示される、写真家土田ヒロミの「ヒロシマ1945-1979/2005」、「ヒロシマ・モニュメント」、「ヒロシマ・コレクション」は、来年、原子爆弾の被爆から70年のひとつの節目の時を迎えるヒロシマをあらためて考える上でも、ぜひみておきたい作品のひとつ。広島の街や、建物、人や、遺された遺品などを長期間にわたり写真に撮り続けている作家の、代表的な作品の一部をみることができる。かつてフランスのヌーベルバーグの映像作家の一人、アラン・レネは、広島を舞台に忘却をテーマにした長編劇映画を撮影したが、ヒロシマを考えるとき、人々はこの場所でおこったことを「忘れてはならない」ということを意識することで、つねに「忘却」と向きあわざるを得ないことを逆説的に意識させられている。
2014年の現在において、一見古めかしいこれらの写真と向き合うことで、人々は自身のなかにある忘却への意識とどのように向き合うのか、とても興味深いと思った。

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新港ピアでは、今年秋に福岡で行なわれる「福岡アジア美術トリエンナーレ」に連動した、アジアに関連をもった作品、東アジアを中心にしたアジアの現代作家たちの作品も展示されている。映像作品も多く出展され、こちらもその作品の背景に思いを馳せながら、時間をとってゆっくりとみてみたい。

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モバイルハウス、あるいはエスニックな移動屋台のような巨大オブジェ作品は、現代美術家大竹伸朗による作品。昨年の瀬戸内国際芸術祭2013、丸亀市猪熊弦一郎美術館、高松市美術館での大規模なエキシビションも記憶にあたらしい大竹の2014年の作品だ。

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アジアの都市がもつむせかえるような熱気が作品から伝わってくるインスタレーション作品は、大竹作品ならでは、道ばたに捨てられた廃棄物や、誰のものかもわからない、アノニマスな家族写真、あるいは看板などで構成される。その過剰なまでの情報量の多さは観るものを圧倒する迫力をもっている。
人々が見過ごしがちなものに光をあて、その裏側にあるものを暴きだす大竹作品は、ここでも特異なイメージを放っていて印象深かった。

それと、横浜にいったら、山下公園や港のみえる丘公園、中華街散策なども楽しみたい。

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こちらは、先ほど、ヨコハマトリエンナーレの新港ピア会場で見た、大竹伸朗作品のリアル版のような移動屋台。炎天下のもと、自転車でひく屋台でアイスクリームを移動販売しているのだろう。このような光景も以前にくらべ最近では街中で見かけることもあまりなくなった。いつまでも変わらず残り続けて欲しい風景である。

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また、横浜に訪れた際に、ぼくが必ず訪れるショップを一軒ご紹介。
石川町駅からもほど近いビルの2階にあるインテリアショップ「black&white」。
こちらは、ジャスパー・モリソンやブルレック兄弟、角田陽太などのプロダクトが店頭にならぶ現代アートギャラリーのようなショップ。決して広くはないスペースだが、都内でもなかなか目にすることのできない、デザインが店内にセンスよくディスプレイされている。インテリアの参考にもなるショップだ。

ヨコハマトリエンナーレ2014「華氏461の芸術::世界の中心には忘却の海がある」
開催中〜2014年11月3日まで

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Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平