Diary

現代美術のハードコアは
じつは世界の宝である

2014年07月31日 

僕は食品や生活用品を、大型スーパーで買います。
八百屋、肉屋、酒屋、とバラバラに買い回ることは少なくなりました。
ただ、そこには店主のこだわりだと雰囲気とか、失ったものもあるなと感じています。

 

IMG_0021

東京国立近代美術館で開催されている「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」(以下ハードコア展)。テーマが面白そうだなと思い、調べてみると美術館が一人のコレクター(財団)のコレクションを展示するという風変わりな企画だということがわかり、早速見に行くことにした。
(写真:マーク・クイン /神話<スフィンクス> スーパーモデル、ケイト・モスをモデルに)

簡潔には、台湾のヤゲオ財団の理事長ピエール・チェンの自宅などで飾られている絵画を持って来て展示するという極めて私的なコレクション展示。しかし、ラインナップはフランシス・ベーコン、ゲルハルト・リヒター、アンディー・ウォーホル、アンドレアス・グルスキー、サンユウ、ロン・ミュエクなど蒼々たる顔ぶれ。
市場価格数百億円相当のコレクションが、上野でも六本木でもなく、竹橋の美術館で見られるという。

以前国立新美術館で行われたグルスキー展にも行き、彼の考え方や表現の緻密さに驚いたのだが、グルスキー展がアーティストの単独コンサートだとすると、今回のハードコア展は野外フェスのようなそれぞれの作品の間にある価値観や、異例の組み合わせによる化学反応が非常に新鮮だった。
コレクターと美術館が協業するということで、今美術館が直面している問題や、我々一般人が社会に対しての意味やメッセージを再考させるきっかけを非常にわかりやすく作ってくれていた。

今回の企画キュレーターである保坂健二郎が我々と同じ30代ということもあり、解説文なども非常にわかりやすく書いてあったのが印象的で現代美術について初心者な僕でも、楽しむ事ができた。

特徴的だったのは、多くの作品に市場価格がはっきりと明記されていたり、解説文が上下に分かれていて、上は美術的見地から下は文化経済学的な見地から書いてある事など、美術専門的になりすぎることなく、作品と社会がどういう接点を持ち、それが今どういう価値を生み出しているかを、金額というあくまで普遍的な単位も用いつつ、見る人それぞれの視点で解釈できるように構成されている。

ピエール・チェンというコレクター「大富豪展」を国立の名前を冠した機関でやるというのはどうなんだと議論が出たらしいのですが、一人の買い物(この場合は大きな買い物ですが)だからこそ、僕は面白いかなと。
○EAMSで洋服を買ったとしても、○EAMSさんという名前の人がいるわけではなく、沢山のバイヤーさんが選んだ物を見ているわけで。
今回の展覧会も普通の企画展だったらここまで面白くはなかったように思います。
「純粋なアート好きの消費行動から、その人の生き様や価値観」を垣間見えるから、面白い。

お金さえあれば、ピエール・チェンのようにアートを自宅で楽しめるわけですが、じゃあ何をどういう価値で選ぶのか?
そこにはお金だけではない、アートを買うという行為を通して、「自分が考える価値との対話」があるわけです。

買い物。
それは誰にでも平等に与えられている。
誰にでも、現代美術を楽しむ権利がある。

東京での期日は8月24日(日)まで。
是非足を運んでみてください。

DSC00013

ーーーー
『現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展』
http://sekainotakara.com/
東京国立近代美術館で開催中。
8月24日まで。その後、名古屋市美術館、広島市現代美術館、京都国立近代美術館を巡回。

島を想うとき

2014年07月25日 

父が転勤族だった私は、小学校が3回変わっている。住んだまちにはそれぞれに想い出があるけれど、一番鮮明に思い出すのは、佐渡島での日々。私はこの島で小学1、2年生の2年間を過ごしている。

3

2

佐渡島は沖縄本島に次いで、日本で2番目に大きい島だ。新潟県西部に位置する島であり、東京23区の約1.5倍の面積を誇っている。人は、佐渡島と聞いて、何を思い浮かべるだろう? やっぱり、まずは日本を象徴する鳥「トキ」だろうか。ほかにも佐渡金山、たらい舟、鬼太鼓、文弥人形・・・。挙げてみると、なかなか濃い文化に支えられた島だなあとしみじみ思う。こうして今でこそ、そのまち特有の文化に想いを寄せるものだけれど、住んでいた当時は7歳、8歳。文化なんてそっちのけで、友達ができるのかどうかの方が、よっぽど重要なテーマだった。世代によって、この世界の見え方は変わる。それが、人生の醍醐味なのだと思う。

5

新潟港からカーフェリーで、約2時間。佐渡・両津港へ。

昨年の6月、約20年ぶりに佐渡島を訪れた。2泊3日の旅。先に挙げた佐渡の文化にはほとんど触れて、すべて堪能した。でも私の心のど真ん中を突いてきたのは、大野亀一面に咲き誇る、数十万本ものトビシマカンゾウだった。この瞬間に命のすべてを捧げるカンゾウたち。それを眺めながら、佐渡で暮らした日々のこと、それから長い長い時間を経て、今、再び同じ場所に立っている自分を初めて意識することができた気がした。

1

もし、佐渡に興味があったなら、カンゾウが満開になる5〜6月をめがけてぜひ訪れて欲しい。

また最近は、自然派ワインで世界的に有名な醸造家・ジャン=マルク・ブリニョさんが佐渡に移住し、注目されている。彼が手がける粋なワインバー「La Barque de Dionysos(ラバルクデュディオニゾス)」は、真野新町にある。

そして、佐渡島の名産物には、おかさ柿というものもある。甘くてジューシー、種がないのでとても食べやすいおけさ柿。佐渡を離れた私の実家に、毎年かかさずおけさ柿が届くのは、当時通っていた小学校の担任の先生のおかげだ。お世話になったのは、わずか2年間というのに。人の縁って、不思議で本当に尊い。実は、この島に訪れた最大の理由は、その先生に会いたかったから。20年ぶりの先生の笑顔。手のぬくもり。再会した瞬間、私は佐渡に縁があったことを、心の底から感謝した。

4

この夏のアート体験

2014年07月20日 

L9999526

芸術の秋というが、今年の夏は日本各地で開催されるアート展が面白い。
今回は、この夏に行なわれるアート関係の情報をお届けしたい。

L1070169

まずは、香川県丸亀市にある、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催中の「拡張するファッション」展(9月23日まで)。
こちらは、この春、水戸芸術館で行なわれたひとつのコンセプトをもった複数の作家が参加するグループ展の巡回展。
ファッションとタイトルにあるが、一体のマネキンの展示もないユニークな現代ファッション展だ。
原初的な、プリミティブなファッションへの衝動が、ある意味アートと同義であることが体感できる、アート展としてみることができるファッションをテーマにしたエキシビションだ。
(上の写真は、2013年夏、大竹伸朗展開催時。美術館の屋上には大竹の作品となる宇和島駅のネオン管が取り付けられた)

L1060218

この写真はこの春、水戸芸術館で行なわれた「拡張するファッション」展の模様。丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での展示についても、次回以降、こちらのDiaryでご紹介したいと思う。

スクリーンショット 2014-07-18 21.30.43

その水戸芸術館では、8月2日よりアーティスト鈴木康広による大規模個展、鈴木康広展「近所の地球」が開催される。今回の展覧会は、<まばたきの葉>など、彼のこれまでの代表作と新作を同時にみることのできる、これまでにないスケールの大きなエキシビション。身近なものに対する気づきを、独特の感性で、大人から子供まで、人々に共有可能なかたちで提示してみせる鈴木康広の作品群。もっとも身近にあるものでありながら、あまり意識することのない「地球」という存在に対する問いかけを本展ではみることができるだろう。
今回のエキシビションでは芸術館の外にも飛び出し作品を展示するというから、こちらも楽しみだ。

L1020443

広島市現代美術館では、第9回ヒロシマ賞の受賞者である、コロンビアの女性作家、ドリス・サルセド展が開催中だ(10月13日まで)。サルセドは、人間における差別や暴力などの歴史を悼む作品を多く手がけ、2007年に発表した「シボレス」では、テートモダンの床に167mにおよぶ亀裂を作り出した。
ヒロシマ賞は、美術を通じて、世界の恒久平和と人類の繁栄を願う「ヒロシマの心」を訴えることを目的に、1989年に創設されたアート分野における国際賞。
本展では美術館の空間をダイナミックにつかった、再生への願いを込めたインスタレーション作品などを展示するという。日本では初となる、サルセドの大規模個展に注目したい。
(写真は、昨年1月に広島市現代美術館で行なわれた「路上と観察をめぐる表現史 考現学以後」展より)

L9991332

3年に一度行なわれる、横浜発の現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2014」が、8月1日から11月3日まで、横浜美術館と新港ふ頭展示施設振興ピアで開催される。
今回はアーティスティック・ディレクターに世界的な現代美術家の森村泰昌を迎え、「忘却巡り」をテーマに、「華氏451の芸術:世界の中心には忘却がある」をタイトルにした作品展示が、横浜の街に繰り広げられる。
今年で5回目となる本展は、注目すべき国内外の作家の作品を一同にみることができるアート展として、横浜という歴史のある街の現代的なひとつの風景として、アート好きにはすっかり根づいた感がある。今回も時間をかけて街歩きを楽しみながら、ゆっくりとアートを堪能したい。
(写真は、前回4回目のヨコハマトリエンナーレ2011のメイン会場エントランスの展示風景)。

写真

そのほかにも、東京オペラシティアートギャラリーでは、2000年以降に登場した24名の絵画作家による「絵画の在りか」展、札幌では札幌で行なわれる初の国際的なアート展「札幌国際芸術祭2014」、川村記念美術館で8月31日から開催される、90年代にイラストレーターとして活躍し、近年世界的な評価も高い美術家、五木田智央による新作を含めた展覧会「TOMOO GOKITA  THE GREAT CIRCUS」、東京都写真美術館で開催中のオランダ在住のアーティスト、フィオナ・タンのエキシビション「まなざしの詩学」(上・写真、9月23日まで)も見逃せない。

最後の写真は、昨年の夏、瀬戸内の島々を舞台に開催された、瀬戸内国際芸術祭2013に出かけた際の風景。
アートとはその作品単体で成立する強い存在感をもったものであると同時に、場所、人、風土、そこで積み重ねられてきた時間など、さまざまな事象との関係性を生み出す触媒ともなるのではないだろうか。アートは、それをみるときの新鮮な驚きとともに、このような「場所」や「あたらしい風景」とも出会わせてくれる。
昨年、瀬戸内の島々で出会ったアートと場所、人とが一体となった素晴らしい体験。この夏もこのような体験ができたならと思う。

L1070571 L1070415

« 6月 2014年7月 8月 »
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平