1. TOP>
  2. Diary>
  3. Mr.Nobody / 人生の選択には意味がある。

Diary

Mr.Nobody
人生の選択には意味がある。

2014年06月30日 

DSC05363

これは、丁度10年前位の写真。
手ブレが凄いので何の写真がわからないと思いますが、
当時オランダの大学院に留学していた部屋から見える景色。
日本に比べると、あまりカーテンをしていない家が目立つのが印象的で、窓の光の色がそれぞれ違って
いて「なんか綺麗だな。」と安直にシャッターを切った写真が、10年後こういう使われ方をするとは思
ってもみなかった。

最近、なぜかオランダづいている。
まさにこれを書いている今日、ワールドカップのオランダ代表が対メキシコに逆転勝利でベスト8に進
出した。きっとダメだなと思っていた後半の40分台にあれよあれよと同点に追いつき、逆転勝利。
結果を出してサラッとピッチを去って行く。彩度の高いオレンジのユニフォームは見た後に残像が残る
し本当この国はインパクトを残すのだけは才能がある。
そして結果も残す、これがオランダだ。

時同じくしてオランダ大使館にて「Alumniオランダ卒業生ネットワーク」という活動発足レセプション
が行われた。オランダに留学していた経験のある人が集まるシンプルなコミュニティーですが、
人生の多感な時期に「オランダに行くという選択」をしたバックグラウンドが共通であるというだけで
その場にいる人々はほぼ初対面にも関わらず、どんどんと繋がっていく。
いつ・どこで・何を・どんな気持ちでしていたか? 留学時は特にその記憶が鮮明なのか、
話している内にその時の光景や感情を思い出せた。
そんな光景が非常に面白い会であったし、これからもこの繋がりを大切にしたいと思う。

Mr.Nobody

 
選択の自由。
どんな選択をするかは「答え」を決める行為であるけれど、そもそも目の前の「それ」がいくつの選択
肢を持つか?という事をどれだけ感じられるかが最近気になっています。
選択のディティール、とでもいいましょうか。

そんな考えに改めて気づかされたのが、2011年に公開された「Mr.Nobody」という映画。
「八日目」などで知られるベルギーのジャコ・ヴァン・ドルマル監督が、不死の世界になった近未来を
舞台に人生の選択について描くユニークなファンタジー。世界で唯一残った死を迎える人間の過去をさ
かのぼり、その男と3人の女性とのそれぞれの運命をつづっていく。(Yahoo映画より)

2092年、医学が発達し人類は不老不死を実現した時代から物語はスタート。
死ぬ事を決めた主人公ニモが人生を振り返っていくんですが
過去を何回も切り取り、あの時こうしていたらああしていたら、というシーンが平行して何回も描かれ
る、パラレルシフト系の映画。

メインは3人の女性の誰と結ばれたらどんな人生を過ごしていただろうか?という軸なのですが
この映画が面白いのは、選択肢が非常に細かく、その一つ一つが綿密に描かれている所。
「それを選択肢にする?」というシーンや、必ず悪い事が起きたり、そのどれもが空想ではなく現実と
して描かれ進んで行くところに、リアリティ描写の凄みを感じます。

観客としては、「どれが本当にあった人生なんだろう?」と推測をしながら見るのですが、
物語はそういう結末には進まない。
選択の枝分かれはどんどん広がり、段々と収拾がつかなくなってくる。
最後に待っていたメッセージはとても太く強烈な物だったのです、僕的に。

パラレルシフト系の映画は難解になりがちですが、「Mr.Nobody」は画面の色やカメラワークにより
それぞれのシーンが繊細に描き分けられており、ほぼ混乱することなく自然に見ることができました。
僕の歴代ナンバー1の映画になったのは言うまでもありません。

相手の意見を聞くかどうかも自分の自由。
嫌だと思うか思わないかも自分の自由。
選ぶのも選ばないのも自分の自由。
それを選択肢と思うかどうかも・・・。

普段気をつけてはいても、いかに自分が当たり前の感覚で色々な事を無意識化に見、
放っているかを思い知らされました。
「どれだけ細かい事を目の前から拾えるか、その感覚があれば自分らしい人生は送れるよ。」
そう言われているような傑作の一本に巡り会えた事もまた選択。

Mr.Nobody
2009年/フランス、ドイツ、ベルギー、カナダ/カラー/137分/
提供:アスミック・エース エンタテインメント 配給:アステア
監督・脚本:ジャコ・ヴァン・ドルマル  撮影:クリストフ・ボーカルヌ
美術:シルヴィー・オリヴィエ  編集:マティアス・ヴェレス、スーザン・シプトン
出演:ジャレッド・レトー サラ・ポーリー ダイアン・クルーガー リン・ダン・ファン

時間という、命の単位
ワールドカップと一冊の本

2014年06月25日 

写真3

今朝、日本はコロンビアに負けた。2014年FIFA ワールドカップブラジル大会。それは4年に一度の晴れ舞台。競技人生、そのすべてを捧げる勝負の時。その尊い時間が、一瞬で過去のものになってしまった。

時代に選ばれて、時代に捨てられていく。なんて儚く残酷なのだろう。でも、個人の意志を超えて時代に呼ばれることは、なんて見事なことだとも思う。試合終了後、内田篤人選手は振り返っていた。「勝負ごとに“たられば”はないけど・・・(話は続く)」

“たられば”。あの時こうしてい「たら」、あそこでこうしてい「れば」。事実とは異なることを仮定して、後悔しても意味はない、ということだ。どんなに後悔しても、現実に打ちひしがれても、自分の心と身体からは逃げられない。

“たられば”は、勝負に限った事ではなく、私たちの営みすべてに言えることでもある。泣いても笑っても人生は止まってくれない。人生とは、生まれてから死ぬまでのこと。例えば、好きな作家の本を時間をかけて読むこと。美味しい食事を身体に摂取して、排泄すること。突き詰めると人生は、一刻一刻の日常の積み重ねだ。

私たちは日々、こうして物心ともに生産と消費を繰り返すなかで、大なり小なり人生の勝負時を迎えている。そしてその瞬間に巻き起こる躍動、つきまとう失敗や後悔の怖さを、私たちは身体で覚えている。サッカーに詳しくない私が、国民が、これだけ夢中になって勝負を見届けるのも、彼らの人生のなかに、自分の人生の一片を、垣間見ている部分があるからではないだろうか。

そんなことを悶々と考えていたら、ふと、ある一冊の本を思い出し、久しぶりに書棚から手に取ってみた。タイトルは、『手から、手へ』。

写真

本作は、詩人・池井昌樹氏の同名の詩と、鳥取砂丘を舞台にした家族写真で知られる写真家で故・植田正治氏の写真を組み合わせて生まれた作品で、ちちははから子供に向けて、大切な家族のものがたりが綴られている。

「どんなにやさしいちちははも
 おまえたちとは一緒に行けない
 どこかへ
 やがてはかえるのだから」

手にした途端、胸が痛くなった。そこには止まらない時間への絶望と希望がまるごとくるんであったから。詩は、自分の置かれた状況や心情によって、受け止め方が変わってくるものだけれど、今日の試合を通過しながらその詩を読んだとき、私の内側には、時間という命の単位が迫ってきたのだった。

ワールドカップと一冊の本。不思議な繋がりを感じた今日もまた、明日になれば過去になる。

『手から、手へ』
詩:池井昌樹 写真:植田正治 企画と構成:山本純司 発行:集英社

ジョージ・ネルソンを知っていますか?

2014年06月20日 

4

マシュマロ・ソファ(1957)やボール・クロック(1948)、ココナッツ・チェア(1956)などのデザインで知られる、20世紀を代表するアメリカ人デザイナーのひとり、ジョージネルソン(1908~1986)の大規模展「ジョージ・ネルソン展 – 建築家、ライター、デザイナー、教育者」が7月15日(火)から、目黒区美術館ではじまる。

本展はドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムが企画する国際巡回展で、アメリカ、ヨーロッパ、アジアではオーストラリア、香港に続き、待望の日本での開催となる。本展のタイトルにあるように、ネルソンは日本で知られているように、アメリカを代表する家具メーカー、ハーマンミラー社で活躍したデザイナーとしての顔だけでなく、建築家、著述家、教育者など、さまざまな顔をもっていることは意外に知られていない。だかもしろデザイナー以外の肩書きの方が、彼の仕事を表すにはしっくりくるといっても過言ではないくらい、その仕事の幅は広い。それはネルソンが1945年にハーマンミラー社のデザインディレクターに就任した翌年に、同社のデザイナーとして迎え入れた、チャールズ・イームズの仕事の幅の広さと比べても、その質において凌駕するといってもいいかもしれない。
5

冒頭に記したようにジョージ・ネルソンは、アメリカのゴールデンエイジといわれる20世紀のミッドセンチュリー期に、ハーマンミラー社から発表されたモダンファニチャーにおいて、のちの世で高く評価される名作の数々を手がけたが、彼のルーツがアメリカの名門イェール大学で建築を学んだことにあるのは、日本ではほとんど知られていない。また、編集者、著述家としての側面に注目した場合、彼が25歳のときに2年間留学したローマ時代に、当時ヨーロッパを代表する現代建築家であるミース・ファン・デル・ローエや、ル・コルビュジエらを取材し、母国の出版社に原稿を送り、留学費を工面していたことは大きい。母国にヨーロッパの最先端の建築事情を届けるという、その仕事のなかで建築ジャーナリズムに意義と価値を見いだしたネルソンは、帰国後、アメリカの建築誌「アーキテクチャー・フォーラム」のライター兼協力編集者として働くことになった。
1

建築家はしばしば、さまざまな事柄を俯瞰的にとらえ、統括する能力に長けるといわれることがある。多くの人との関わりのなかでひとつの建築物を実現していくのが建築家の仕事でもある。建築ジャーナリストとして活動しはじめたころから、建築家としての仕事に疑問を持ちはじめたというネルソンは(ちなみに本展には、NYの現存する建築家ジョージ・ネルソンの作品も展示される)、暮らし方そのものや、社会のシステムを構築するような、建築家がもつ論理的な思考を、よりライフスタイル全般に結びつけるような仕事に方向転換していく。

1947年、デザイナーだけでなく、建築家、カメラマンやグラフィックデザイナーなどをさまざまな業種の専門家を集めたデザイン事務所兼広告代理店「ジョージ・ネルソン・アソシエイツ」を設立すると、自身は現在世の中で知られるデザイナーとしてだけではなく、ディレクター、プロデューサーとして、数々のプロジェクトを統括していく立場になる。
本展でも紹介されている、ジョージ・ネルソン・アソシエイツが企画・展示デザインを手がけモスクワでおこなわれた「アメリカ博覧会」(1959)に端を発する、「アメリカのインダストリアルデザイン」(1967)は、冷戦時代のロシア向けに編纂した、アメリカの工業デザインをプロパガンダする広報誌だ。アメリカ政府の仕事として、そのデザインと編集をかれのオフィスが手がけたもので、資本主義社会がいかに生活をよくするか、当時のアメリカ政府が工業デザインの売り込みをアメリカの資本主義の重要課題にしていたかを示している。そのことだけをみてもジョージ・ネルソン・アソシエイツの仕事が多岐にわたり、かつ組織的におこなわれていたかを知る重要な資料である。2

インテリアデザインにおいては、ハーマンミラー社のデザイナー兼デザインディレクターとして、量産を前提とした家具の開発や、ウォールユニット「CSS」(1957)や、「アクションオフィス」(1964)など、新しいかたちの収納家具やシステマティックなオフィス家具を手がけて革新をおこした。暮らし方や働き方といったライフスタイル、展覧会ではパビリオンの設計など、システムを構築していくようなネルソンの仕事は、彼の世界の本質的な部分を追求する思考プロセスそのものだろう。

デザイナーとしての側面に注目した場合、ハーマンミラー社の兄弟会社、ハワードミラー社では、それまでの既存の概念を覆えすような時計の数々をオフィスの有能なスタッフとともに「ジョージ・ネルソン・アソシエイツ」として手がけた。ぼくの部屋でも使用している「ボール・クロック」(1948)は、いまでも膨大な数のコピー商品を生み出す、インテリアとしての時計のマスターピースだ。文字盤に時を示す数字がないものも多いその時計たちは、人間が時計をみるときに、時計の二つの針の開き具合で時間を直感的に判断することに確信をもったデザイン。それはある種現代のアップル製品が、説明書に書かれた多くの言葉ではなく、直感的な操作性能をそなえていることと、考え方のうえでどこかで通じるのではないだろうか。
3

ディレクター的な才能に長けたジョージ・ネルソンだから、ものを見る目には確かなものがあった。1977年に出版した書物「HOW TO SEE」は、そのタイトルが示す通り「ものの見方」を示した本。世界中の工業製品や日用品などの道具などの人工物を、有名無名、価値無価値、新しい古いなどのヒエラルキーなくフラットに網羅するネルソンのまなざしは、手とともに目で仕事をする、さながら「日常の発見者」的視点に満ちあふれている。現代において再注目される、今和次郎の「考現学」(1927年)にも通じる、リサーチにもとづく価値の再発見ともいえるものだ。こんなところにもジョージ・ネルソンの仕事の現代性を感じることができるだろう。

そのほかにも、日本のこけしの蒐集家、日本人グラフィックデザイナー 岡秀行の著書「日本の伝統パッケージ」(1965年)の英語版「HOW TO WRAP FIVE EGGS」(1975年)に序文を寄せたことなどにみられる、日本の工藝や民藝との邂逅など、日本との関わりも本展ではみることができる。
数多くのプロダクトや著書などが展示され、ジョージ・ネルソンのデザイナーとしての仕事を数多くにスポットライトをあてながら、その背後にある、考え方や、ものを見るという普遍的なところにフォーカスをあてたジョージ・ネルソンの東京でのエキシビションに注目したい。

 

「ジョージ・ネルソン展 – 建築家、ライター、デザイナー、教育者」
2014年7月15日(火)~2014年9月18日(木)
目黒区美術館

L1080443

« 5月 2014年6月 7月 »
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平