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フラットに描かれた、鮮やかなイメージ。
田部井美奈「POOL SIDE」

2014年05月04日 

POOL_SIDE_展示_1

グラフィックデザイナー、田部井美奈さんの個展「POOL SIDE」が京都にあるギャラリー、京都メリーゴーランドで開催中だ(5月7日まで)。

ピンク、ブルー、グレーのポップな配色でレイアウトされたプールサイドの、コマ送りのシーンのような5枚の連続作品。
水面とプールサイドが斜めの線で区切られている。白いタイルのブルーの目地と、ブルーのグラデーションの波形で描かれた美しいプール。そこに添えられる簡潔なフォントのタイポグラフィ。

田部井美奈さんは広告、CI、書籍や雑誌などの仕事で活躍するグラフィックデザイナー。ポスターや書籍のエディトリアルデザインに加え、ウェブサイトやプロダクトのデザインも行うなど、その活動の幅は広い。2009年からは、写真家、イラストレーター、小説家、グラフィックデザイナーの4名からなるアトリエ「kvina」のメンバーとしても活動。東北支援のためのプロジェクトも積極的に行っている。「POOL SIDE」は、今年2月から京都メリーゴーランドで開催中の、kvinaのメンバー4名によるリレー展示「kvina ekspozicio」の第2弾として開催されている。

ギャラリーには「POOL SIDE」という、同一コンセプトをもつ5枚のポスター作品が展示。POOL SIDEをテーマにした作品は以前にポスターを制作したことはあるが、今回の展示のために、あらためて本格的に作品づくりに取り組んだという。

展示は、白いふちのあるB1サイズのポスター5枚と、最小限の説明のみのミニマルな展示方法。一度目はなんの情報もなく作品の色の美しさやレイアウトを楽しみ、その次は作品説明を読み、テーマや背景に思いを馳せながら見るのも楽しいだろう。

5つの作品には、そのすべてが同じ構図のもと、連続したストーリーを思わせる図案が描かれる。

ピンクのビキニを着てプールサイドに腰掛ける女性、そして男性のイメージ。水面に浮かぶスイムパンツ。タイトル文字が中央に書かれた、映画のタイトルバックのような作品など。それらが、同一の背景のもと、イメージやシーンを大胆に切り取られ、描かれている。

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アートの世界でプールのモチーフは、デイヴィッド・ホックニーの絵画や写真に、グラフィックデザインのモチーフにもしばし用いられる。田部井さんの描くプールサイドのイメージは、切り絵のようなフラットさが強調されながら、曲線と直線のレイアウトや、ところどころに描かれる影のせいもあり、不思議な立体感をもつ。それは、田部井さんのグラフィックデザイン作品の平面性とも共通する。

プールは人工的な構造物のなかに水を張った場所。プールとプールサイドにみられる「水辺」という関係性は、川や海など、自然のなかにもいくつかみることができるが、プールは、それが極端に「人工的」につくられた場所である。ビジュアルモチーフとしてはもちろん、そんなプールサイドがもつ、人工的な部分にも惹かれる、と田部井さんはいう。

また、水に入るとき水着を着ることは自然な行為だが、プールサイドに上がったとたん、時にそれは大胆な装いにもみえる。それは”プールサイド”であるからこそ許される、エロティックなシチュエーションでもある。田部井さんが今回つくりだした作品にも、太陽の下におけるプールサイドの健康的なイメージと、人工がつくりだすエロティックなイメージが交錯している。

作品の特徴は、そのイメージと色の鮮やかさとともに、そこの添えられるテキストにもあらわれている。BIKINI、GIRL、POOL SIDEなど、作品を見ればわかるような言葉をあえて作品中にレイアウトしているのだが、絵を”地”とするならば、”図”としての言葉のその配置は絶妙で、言葉やイメージを平面上にレイアウトすることに長けた、さすがグラフィックデザイナーの作品であるとうなってしまう。

その5つのシーンは、連続してみていくと、ある物語を持った、映画のシークエンスをも思わせる。

今回発表された、これら5つの作品は、構成されたそのイメージの印象により極めてミニマルな作品ともいえるが、斜線、色、グラフィック処理をされた波のイメージ、タイポグラフィといった複数の要素により、見るべきところの多い作品群である。ぜひ実際にみていただきたい作品だ。

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Authors

加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平