Diary

良いデザインとは何か。

2017年03月20日 

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創刊号から編集ディレクションと執筆を担当している
フリーペーパーTOKYO PAPER for Cultureの最新号(vol.16)が完成して、
現在、都内を中心に配布がスタートしています。
(*ウェブマガジンでも読むことができます)

 

巻頭対談に、宮前義之さん(ISSEY MIYAKE / デザイナー)と
緒方壽人さん(takram / デザインエンジニア)に「拡張していく身体感覚」をテーマに
話をお伺いしたのですが、この対談を通じて、個人的にもハッとさせられたことがありました。

 

エンジニアリング、それは直訳すると工学。
数学も関わる、それは私のとても苦手な分野として、どこか捉えていました。

 

例えばエンジニアリングを自分の身近な領域に置き換えると、
インターネットの世界が思い浮かびます。
まるで暗号のようなアルファベットを打つ=プログラミングすることで、
コンピュータに指示を与え、結果的に私たち人間の思う通りにウェブメディアが構築されていく。
その立役者がエンジニアと呼ばれる技術者だと私は思っていました。
つまり、見た目の意匠がデザインだとするならば、
それを支える構造がエンジニアリング、
となるわけですが、今回宮前さんと緒方さんの対談を聞きながら、
デザインとエンジニアリングは役割は違う。
だけど優れたデザイナーはエンジニアリングのマインドがあること、
またその逆もしかりということを気づかされました。

 

と同時に、何より私はデザインの、美しい構造にいつも惹かれていたんだなあと痛感したのです。

 

編集者という仕事柄、デザインはいつも身近な存在です。
例えば編集者として紙媒体を作るとき、
グラフィックデザイナーが誰よりも仕事のパートナーになります。
編集者が頭の中で設計した企画を、様々なクリエイターの力を借りながら編んでいった先に、
最終的にはデザインの力で「形」になるのです。
形、見た目の意匠は、デザインによって大きく変わります。
ときにデザインがその媒体の性格すら変えてしまうことがあります。
デザインの強さも怖さも美しさも日々感じているからこそ、
デザインには敬意を持って生活してきました。

 

良いデザインとは何か。
私がいつも美しいなと惹かれるデザインは、
見た目だけの意匠に寄りかかるのではなく、
美しい構造にあったんだ、
つまりそれを対談を通してハッとしたんです。
イメージとしては、構造は体幹のようなもの。
体幹がしっかりしていないと人間も不安定になるように、
デザインもまた、体幹がないと不安定になります。
見ていてなんだか気持ち悪い、
落ち着かないデザインはこういうことだったんだと
やっと言葉にできたような気がします。
デザインとはフィジカルなもの、それもまた改めて思い知らされました。

 

ちなみに文章を書くということもまた、
すごくフィジカルな行為だなあとつねづね思うのですが、
そのことはまた改めて綴れたらいいなあと。

アスリートと私たちのあいだにあるもの

2017年03月10日 

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21_21 DESIGN SIGHTで2月17日から始まった企画展「アスリート展」は、さまざまな点で私たちにもっとも身近にある「身体」について考えさせる展覧会である。
私たちはアスリートという存在についてどのようなことを知っているだろうか?鍛えられた肉体、研ぎすまされた精神性。超人的な身体能力と偉大な記録。スポーツ新聞の一面をにぎわすヒーロー。それらはどれも間違いではない。だが、アスリートとは?という問いかけの前に、ある種の天才、自分とは異なる手の届かない特別な存在と認識している自分がいる。
子どもの頃、特に男子であれば、トップアスリートという存在に惹かれ、何かしらのスポーツに親しむ。そして肉体の高揚感と精神の開放感を感じ、達成感とやがて挫折を味わう。

アスリートと私たちの違いとは、そんな日々の積み重ねや試行錯誤を繰り返すことをいとわず、自らの目標を達成するために自己の限界を乗り越えていくことができるかどうか?それは何も特別なことではなく、日常の何気ないふるまいや出来事に対し、繊細に、ときに執念深く感覚を研ぎすまし、持続的に向き合うことができるかどうかに関わっている。

自己と向き合い、努力を重ねることでのみ実現する、アスリートのある人間離れした驚異的なパフォーマンスは、それを見るものの心をゆさぶる。
もしかしたらあり得たかもしれない自分という存在に重ね合わせ、アスリートをテレビ、あるいはスタジアムで観るとき、人はそこに文字通り自らを投影しているのかもしれない。

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生い立ち、環境、食習慣、体型、社会、道具など。アスリートを構成するさまざまな要素を、映像、写真、体験型作品、スポーツギアなどの展示作品を通じ、アスリートを今までにないデザインの視点でとらえようという取り組みが本展「アスリート展」である。

アスリートをテーマにコンセプトや展示作品にまとめあげる展覧会ディレクターには、元トップアスリートで現在社会的な影響力をもつ為末 大氏、映像作家/研究家の菅 俊一氏、デザインエンジニアの緒方壽人氏(Takram)の3名がつとめる。

「驚異の部屋」では、トップアスリートの動きをモーションキャプチャー技術によってデジタル化した等身大の映像作品で目の当たりにすることができる。四面の壁をものすごいスピードで走り抜けるランナー、棒高跳びの選手ははるか天井の向こうに消えていく。この部屋の中央には走り幅跳びと高飛びの世界記録が構造物で展示される。アスリートの動きを目の前に体験することはなかなかない体験で、そのスピードと高さには本当に驚く。

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個人的に大好きな展示作品である「アスリートの体型特性」は、スクリーンの前でアスリートのポーズをとることで、ポーズをとった競技に対応するアスリートの身体に変化する体験型映像作品。これは一口にアスリートといっても、その競技によって適した体型はそれぞればらばらで、相撲なら相撲、体操なら体操というように競技に特化した多様性のある身体があるのだとあらためて感じさせてくれる。余談だが、かつては競技によって体型特性は明確には分かれておらず、体型においても完璧な一人の人間としてのアスリート像が求められたのだという。

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デザインの展覧会らしく、本展のために制作されたデザイナーによる作品も展示コーナーも用意される。

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友人でもあるデザイナーの角田陽太氏は、金銀銅のメダルをデザインした。日本で開催されるオリンピックを視野に制作されたこのメダルには鋳造と研磨という日本のものづくりの技術が活かされている。

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デザイナーの大原大二郎氏は「動線」という本を制作した。ここにはスポーツクライミングのルートが、既存の競技会場を拡張して描かれている。大原氏が描く繊細な線は日常と非日常の境界を超えていく。

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今回、スポーツギアで構成される「身体拡張のギア」の構成、会場内のキャプションの作成のお手伝いをさせていただいた。スポーツギアがフレミーングされたクールなインスタレーションはデザイナーの寺山紀彦氏によるもの。ギア選びは単に最新のものや有名選手が使用していることではなく、それを使うことでアスリートの身体拡張が起こっていること、そしてものづくりの背景があることを基準に選んでいる。また全てではないが、日本人のつくり手(職人、技術者)による、日本のものづくりが背景にあるものを中心に選んでいる。これらのギアは素材や技術の開発の歴史、テクノロジーの進化の積み重ねであり、そしてそれはアスリートのパフォーマンスの向上や記録の更新にも直結している。と同時にスポーツにおいて「人間」と「環境」のあいだにあるものが道具であり、ギアであるといえる。
最新のスポーツギアには、各競技におけるそれを使うトップアスリートの声が反映されている。そしてそれを形にするつくり手の技も欠かすことができない。「もう少しそばにいて欲しい」「あと一皮薄く」。これら感覚的な言葉は、ギアをつくる職人や担当者に向けられたアスリートの声。そんな抽象的なニーズに対して、つくり手たちはその技で応えていく。例えばミズノ製の野球バットは、丸棒の状態に加工された木材を巨大な轆轤のような機械にセットし、それをバイトと呼ばれるノミやカンナで見本を頼りにフリーハンドで削ってつくる。そしてトップアスリート用のギアはそれをつくるための道具の多くも自作されたものだ。ギアをつくるためにつくり手たちは、キャンプ場や練習場、実際のスタジアムに足を運び、選手のニーズを聞き出す。アスリートたちのみるものを圧倒するパフォーマンスはスタジアムに入る前にすでに始まっているのだ。

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SWANS(山本光学株式会社)のレンズは、「環境に適応するレンズ」と捉え展示。明るい屋外では不要な光をカットしたり、雪山では雪の反射を抑え、屋外のコートでのボール競技においてボールを見やすくするなど、環境に適応したアスリートの効果的なパフォーマンスをサポートするレンズ群。

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陸上競技用車椅子の展示でご協力いただいた株式会社オーエックスエンジニアリングのアスリート用の車椅子制作風景。手描きの図面で一点もののパーツを制作。精度はもちろんミリ単位で調整していく。

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会場構成は建築家の工藤桃子氏と高橋真人氏。各コーナーの作品を半透明なスリット状のスクリーンでゆるやかに仕切っている。
展覧会グラフィックは古屋貴広氏(Werkbund)

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「身体 コントロール」(運動の三つの要素、スペーシング・グレーディング・タイミング)の展示作品にトライしているのは展覧会ディレクターの一人である為末大氏。
普段無意識に行っている行動や行為をあらためて可視化する展示によって浮かび上がってくるのは、アスリートは私たちが日常で何気なく行っている行為を高度に研ぎすことの先に、驚異的な身体能力や記録があるということ。アスリートは私たちからしてみれば超人には変わりがないのだが、決して私たちと違う次元の存在ではない。本展がみつめているのは、アスリートとわたしたちのあいだにはあるその目には見えないグラデーションなのではないだろうか。

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「アスリート展」
会場:21_21 DESIGN SIGHT
会期:2017年2月17日(金)- 6月4日(日)
詳細はこちらのサイトにてご確認ください
http://www.2121designsight.jp/program/athlete/index.html

民具木平の市場調査 第21回 Google Earth 〜地球砂漠化〜 ”Google Earth 〜Global desertification〜”

2017年02月28日 

今月、6年くらい使ったMacBook Proを買い換えて、諸々スペックが上がったので、今までこんなにサクサクと見ることのできなかったGoogle Earthを見るようになった。(OSをあげてなかったせいかもしれない、、)
これがまたすごくて、引いても寄っても面白く、視角も変えれたりと、時間が許せば一日中見ていても飽きない。
そしてそれにより、僕の事務所で唯一自慢できるガジェットであるEIZOのEV2730Qという正方形のモニタの威力をようやく発揮することができるようになったのである。
http://www.eizo.co.jp/products/lcd/ev2730q/

はじめは建物を探していて、そこから周辺の近所を見ていて、建物→街→市区町村→都道府県→国、、という具合にどんどん引いていくと、当たり前だが地球になった。

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このように視角を自分の好みに変えることができる。
東京の場合は公園の木々一本一本にも高さ情報が与えられ3D化されているのには驚きました。

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北を上にして、日本を真ん中にした地球です。

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西に移動して見る。中華人民共和国、モンゴル、アフガニスタン、イランなど。

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サウジアラビア、アフリカ北部。

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アメリカ合衆国、メキシコ。

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南に目を移してオーストラリア。

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南アフリカ。

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南米チリなど。

それとなく地球をくるくる回して見ていたら、緑色ではなくて、黄土色の多さに驚愕した。
これは図ではなく写真なのである。

「温暖化 」とか「砂漠化」、「熱帯雨林減少」など、頭では言葉としては理解しているつもりだったけれども、写真という具体的なヴィジュアルを見るという行為は、ときに言葉や概念を頭で理解するということ以上のインパクトをもたらしてくれる。
日々ものを作ったりする中で「じゃあ、ここはラワンの積層合板で」などという会話がなされる日常だけど、そうも言ってられないなと改めてこの写真を見て思う。

同じようなサービス(というか映像)としては、イームズのPOWERS OF TENが有名だが、Google Earthもまた、人々に客観的かつ相対的な視野を提供し、気づき与えてくれるという意味ではパワーズ・オブ・テンにも負けず劣らずすごいなあと思った。
https://www.youtube.com/watch?v=0fKBhvDjuy0

写真やグラフィックを扱うソフトが月々5000円くらいかかったり、図面を引くためのソフトが初期費用に40〜50万円くらいするというにもかかわらず、ある意味神の視点を与えてくれるこんなに物凄いサービスがタダで利用できてしまうなんて、Googleという企業と、そのような企業を育んでしまう   アメリカ合衆国という国は改めて物凄い怪物だと思った。

日本というこれだけ水と緑に溢れた場所に生まれたラッキーを確認すると同時に他人事じゃないよなと思った。

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加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平