Diary

DESING ARCHIVES #1 Oak Inside

2017年05月10日 

ヒンデローペンはオランダ北東部フリースランドにある港町。伝統的に港湾貿易が盛んな町で、大西洋を通じてバルト海沿岸の森林資源の豊富な北欧諸国との交易があり、多様な木材文化が古くから栄えた町だ。干拓地として知られる天然資源の乏しいオランダにあって、港町には木工製品の文化が古くから根づいており、北欧のクラフトとも微妙にことなる木材をマテリアルにしたさまざま工芸品が生まれた。

木材製品を装飾するためにヒンデローペンで生まれた「ヒンデローペン・スタイル」と呼ばれる素朴な手描きによる絵柄は、濃い赤、青、緑とベージュをベースカラーに鮮やかな色味に特徴がある17世紀末発祥の絵付け画法。絵柄はフォークロアスタイルで花や鳥などが描かれており、素朴な絵付けは現在でも世界中でフアンが多いと聞く。
ヒンデローペンは、同じオランダ国内のヘラ・ヨンゲリウスやスタジオジョブの磁器作品を手がけることでも知られるマッカム焼きの工房がある町、マッカムにも近い。
クリスティン・メンデルツマのオーク家具コレクション「Oak Inside」は、オランダの現代アートギャラリーPriveekollektie Contemporary Artから、トーマス・アイク・コレクションとして発表されたもの。Priveekollektie Contemporary Artはオランダの彫刻やデザイン、絵画、写真まで幅広く取り扱う現代アートギャラリーで、デザインマイアミなどの国際的な現代アートフェアにも参加している。トーマス・アイクは2000年代初頭よりおもにオランダのプロダクトデザイナーとの恊働により、オランダ独自の素材と伝統に従った製品を発表しているデザインレーベル。フォークロアや工芸をテーマとしてながらも、単なる工芸とはことなるアーティスティックなアプローチに特徴がある。これまでもスタジオ・ジョブ、アルド・バッカー、ショルテン&バイーングらの作品を発表し、その繊細丁寧なものづくりには定評がある。
「Oak Inside」コレクションは、テーブル、椅子、カップボード、脚立、ボックス、スパイスミル、ラグで構成された家具シリーズで、クリスティンのサイト内のOak Insideのページをみると分かるのだが、これらの作品は多彩な色彩で描かれた1800年代のHendrik J.Lapにより絵画の中に描かれた家具を精巧に写しとった「写し」作品である。
北欧のデザイナーたちは過去の良質なデザインを良いところはそのままで、現代に見合った視点で更新=リデザインすることで、時代にあった道具やデザインを生み出してきたが、現代オランダのデザイナーたちもリデザインとは手法はことなるが、伝統をモチーフに現代的なデザインを生み出している。
装飾を施されたテーブルは簡易的な折畳み式、スパイスミルのその特徴的なかたちはテーブルの脚に由来し、ボックスはオランダの航海士が使用していた衣装ケースにインスパイヤーされている。ラグと、椅子のシートはニッティングデザイナーでもあるメンデルツマらしく、極太のニッティングによる作品が用いられており、素朴だが大胆な作品になっていると思う。
またカップボードに描かれた柄は典型的なヒンデローペンスタイルの絵柄だが、オランダには手のこんだ伝統的な寄せ木細工の装飾も有名だ。今回の作品ではまさにヒンデローペンスタイルの絵柄を得意とする専門的な工房である1894年創業の「Roosje Hindeloopen」と恊働した。
これまでも、デザインアカデミーアイントフォーフェンの卒業制作として制作された9.11以後のスキポール空港での没収品を集めて写真におさめた「チェックドバゲージ」や、消費量が世界一といわれているオランダの豚をめぐる状況をリサーチし一冊にまとめたPIGなど、当たり前な日常の背景に潜む社会の仕組みやロジックを独特のアプローチで作品に置き換えてきたクリスティンだけに、Oak Insideにこめられた意味を引き続き探っていきたいと思っている。

クリスティンのサイトでは彼女の作品をたくさん見ることができる。

民具木平の市場調査 第23回 2017年4月 東京(ランダム)&『三月の水』 ”Tokyo 2017 April (Random) & 『Águas de março』”

2017年04月30日 

こうしてるあいだも右の奥の下の歯が痛い。
タイトルの2017年4月 東京という文字の並びがまったくもってピンとこない。

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『三月の水』(アントニオ・カルロス・ジョビン)菊地成孔さん朗読

枝 石ころ 行き止まり
切り株の腰掛け 少しだけ独りぼっち
ガラスの破片
これは人生 これは太陽 これは夜 これは死

この足 この地面 この身と骨
道路の響き スリングショット
魚 閃光 銀色の輝き
争い 賭け 弓の射程 風の森 廊下の足音
擦り傷 瘤 何でもない

槍 釘 先端 爪 ぽたぽた この物語の終幕
トラックが運んでくるいっぱいの煉瓦 柔らかな朝日の中
銃声 丑三つ時
1マイル やるべき事 前進 衝突
女の子 韻 風邪 おたふく風邪

家の予定 ベッドの中の身体 立ち往生した車
ぬかるみ ぬかるみ

そして川岸が語る 三月の水
人生の約束 心の喜び

浮遊 漂流 飛行 翼
鷹 鶉 春の約束 泉の源
最終行 落胆したあなたの顔
喪失 発見
蛇 枝 あいつ あの男
あなたの手の中の棘 そしてつま先の傷

川岸が語る 三月の水
それは人生の約束
それはあなたの心の喜び

一点 ひと粒 蜂 ひと口
瞬き ハゲタカ 突如の闇
ピン 針 一撃 痛み
かたつむり なぞなぞ カリバチ 染み
枝 石ころ 最後の荷物 切り株の腰掛け 一本道

そして川岸が語る 三月の水
絶望の終わり
心の喜び
心の喜び
心の喜び

この足 この地面
枝 石ころ これは予感 これは希望

 

北九州は小倉、そして日田

2017年04月20日 

3月の終わり。

画家の牧野伊三夫さんと一緒に、牧野さんの故郷でもある
北九州は小倉と大分県は日田を旅する縁に恵まれました。

牧野さんの視点もお人柄も、そして描かれる絵も、
全てがチャーミングでユーモアがあり、
それでいて鋭く、太く、かっこよく。
とにかく一言では言えない何層にも渡ったその魅力に
いつも取り憑かれている私は、牧野さんの目線で眺める
小倉と日田を旅できるとあらば行きたいと、決まった時点から本当に
ワクワクしました。

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「小倉へは船で」。
行き方のディレクションも入りました。

大阪・南港から北九州・新門司港までフェリーが出ているから
それに乗って北九州へ来ると良いですよ、と。

フェリーは名門大洋フェリーという名。
大阪から九州まで、新幹線であれば2時間半で着くところを、
フェリーに揺られる場合は、10時間以上の旅になります。
佐渡島に住んでいたことのある私にとって、
船は案外と身近な存在ではあったけれど、
瀬戸内海を航海するのは初めて。

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実際乗ってみると、これまた一瞬、まさかのタイタニック気分。
佐渡島を往復する船の規模とは格が違うし、
何より船という非日常の空間は、人を高揚される力を持っています。

その後、お風呂に入れば、女子高生たちと裸の付き合いをしたり、
明石大橋を通る瞬間を見たいと甲板に出れば、記念写真に夢中の大学生の集団と相見えたり、
そこでタイタニック気分から一気に修学旅行気分へと様変わりするわけですが、
それはそれで楽しいものでした。

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翌朝。
この風景を見るために、名門大洋フェリーに乗ったのかもしれない。
そんな瞬間を掴みとりながら、新門司港へ到着。
小倉駅にて牧野さんと合流しました。

月天という、最高の小倉ラーメンを食べた後は、
小倉北区京町に開館した「北九州文学サロン」へ。

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牧野さんがサロンのシンボルとして、
陶板画「かがやく太陽、燃える鐵、うたうわれら」をTOTOと共同制作されていたので
それも合わせて見学するために訪れました。
サロン内に展示されていた北九州ゆかりの作家のパネル一覧を見ながら、
こんなにたくさんの作家を生み出した土地なんだと思いつつも、
実際、自分自身小倉の街を踏みしめてみて、納得する部分もあり。
炭鉱の街、小倉は街を射す光がどこか切なくて、淡い感じがあって、
その孤独な振る舞いが、書くという行為に走らせたのかな、などと思ってしまう。
実態のない言葉で申し訳ないのですが、それがとにかく私の実感でした。

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その後、牧野さんの北九州の画室、足立山にもお邪魔して、古い作品をたくさん見せていただき、
敬愛する画家の深層部にたどり着いたような気分をたっぷり味わい、
陽も暮れた頃には、門司港にてそれはそれは人生で一番というお寿司を食べました。

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翌日。
小倉から大分県日田へ。
日田では牧野さんは冊子係として参加しているヤブクグリのみなさんと合流。

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「いま、森を見よ!」
の合言葉で、 森を愛する仲間が集い、
日田の林業を中心に何か愉快なことをやっていく会、ヤブクグリ。

私はそんなヤブクグリの周辺に身を置かせていただくことで、
念願だったきこり飯を食べたり、日田杉の現状を知ったり、
ヤブクグリミーティングに参加させてもらいました。

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そして日田といえば日田シネマテーク・リベルテさんです。
オーナーの原さんがキュレーションした映画作品の上映をはじめ、
牧野さんを含む様々な作家さんによる作品の展示や
カフェスペースもあるリベルテさんは、
映画館でありながら、映画だけではない空間を、
とても大切に積み重ねていました。

私はそこで2度目となる「この世界の片隅で」、
そして「五島のトラさん」を牧野さんやヤブクグリのみなさんと鑑賞。
旅先でそれも朝、映画を観ることは初めてでしたが、
これがまた旅を満たす後押しに。
鑑賞後では、見えている景色が少し変わって見えるから不思議です。

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もちろん、日田の美味しいものもたくさんいただき、
牧野さんが大切にしてきた風景を、一緒になぞるという楽しみを存分に味わい、
私はそのまま別府へ。牧野さんは飛騨高山へと向かいました。

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3泊4日。
非日常の時間を過ごしながら、
その土地の日常をつねに探していました。
ワクワクしたり、どきどきしたり、本当に色っぽい瞬間とは、
いつだって日常にあるように感じています。
それを敬愛する人と一緒に共有することは、
幸せと呼ぶんだなあと思った、旅でした。
ここでの旅が、自分の日常にどう作用するのか、
とても楽しみでもあります。

 

 

 

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加藤 孝司加藤 孝司
水島 七恵水島 七恵
野本 哲平野本 哲平